2014 Fiscal Year Research-status Report
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26450164
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
新本 洋士 玉川大学, 農学部, 教授 (50355301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スギ花粉 / トマトアレルゲン / B細胞 / 共通アレルゲン / 抗体 / ハイブリドーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
スギ花粉アレルギー患者数人の末梢血の抗スギ花粉抗体を簡易キットを用いて測定し,抗体価の高い患者#14を選別した。患者#14からあらためて採血し,希釈した血液から密度勾配遠心によって単球画分を分離した後,シクロスポリン存在下でEpstein-Barrウィルスを感染させて複数のBリンパ芽球様細胞(BLC)を含む96グループの細胞群を得た。このような細胞は培養液中で数十回まで増殖しながら抗体を分泌することができると考えられる。 スギ花粉抽出液,市販の数種の栽培種トマト抽出液,本学農場で栽培されたトマト抽出液を抗原として酵素免疫測定法(ELISA)を用いてBLCが分泌する抗体との反応性を測定したところ,トマト品種による反応性の差異が認められた。なかでも農場において有機的に栽培された品種と強く反応する抗体分泌細胞が存在することが明らかになった。 スギ花粉抽出液と国産トマトの標準品種と考えられる桃太郎抽出液に共通して反応した抗体分泌細胞を選択し,スギ花粉抽出液を抗原としたトマト抽出液での抗体の結合競争阻害試験,あるいはその逆の競争阻害試験を行い,それぞれに濃度依存的阻害が見られたことから,スギ花粉抽出液とトマト抽出液には共通のアレルゲンが存在することが推論された。 またこれらの研究と並行して,BLCの抗体分泌を永続させるための方法として,マウス骨髄腫細胞株を用いた細胞融合によるヒト-マウスハイブリドーマの作出を試みたが,ハイブリドーマは得られていない。ハイブリドーマの選択に用いる培地添加成分の濃度を細かく設定する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者#14からのBLC調製は順調に実施できた。ELISAによるBLC分泌抗体のスクリーニングにおいては,トマト品種よる抗体の反応性の差異がみられた。トマトによる口腔アレルギー症候群発症は,熱に不安定なアレルゲンによるものと考えられるが,加工用トマト品種の加工品(トマトジュース)との反応が見られる抗体もあることから,抗体が反応するアレルゲンの単離精製と詳しい解析が期待される。結合競争阻害試験も順調に進み,初年度の計画から一部平成27年度計画まで踏み込んだ研究が実施できた。 未解決の問題点はヒト-マウスハイブリドーマの作出ができなかったことである。選択試薬濃度の細かい調整が必要である。具体的には,より低濃度のウアバインによってBLCを死滅させることが重要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はBLCとマウス骨髄腫細胞株との細胞融合によりヒト-マウスハイブリドーマの作出を行う。新たに設定した培養条件下で永続的に抗体を分泌するハイブリドーマを作出し,分泌される抗体を用いたスギ花粉アレルゲンおよびトマトアレルゲンタンパク質のさらなる解析を行う。また,並行して新たにスギ花粉に対する抗体価の高い患者#15末梢血リンパ球からBLCを調製し,抗体分泌細胞のスクリーニングを行い,ハイブリドーマ作出を実施する。得られたハイブリドーマはクローニングを繰り返すことにより,単一抗体を分泌するものを樹立する。 数種のハイブリドーマが得られた時点から,新規アレルゲンタンパク質の単離精製を試みる。スギ花粉抽出液を種々のクロマトグラフィーにより分画し,樹立した細胞が分泌する抗体でアレルゲンタンパク質を検出し,アレルゲンタンパク質を単離精製する。同様に,新鮮トマト果汁からのトマトアレルゲンタンパク質の単離精製も試みる。もしハイブリドーマの抗体産生が安定で,抗体が大量に精製できる可能性がある場合には,抗体アフィニティークロマトグラフィーについても検討する。 部分アミノ酸配列の決定は最終年度に計画しているが,進捗状況によっては前倒しで行う。N末端から数個程度のアミノ酸配列を決定し,ホモロジー検索によってアレルゲンタンパク質全体に関する情報を得る。
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