2014 Fiscal Year Research-status Report
N-アセチルアミノ糖に着目したヘテロオリゴ糖の機能特性研究
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26450166
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西尾 俊幸 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10256836)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機能性オリゴ糖 / N-アセチルグルコサミン / N-アセチルスクロサミン / プレバイオティックス / ビフィズス菌 / 糖転移反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、次の2つの項目について実験を行った。1、N-アセチルスクロサミンのプレバイオティクスとしての有効性を評価するため、人の腸内由来のBifidobacterium属細菌12株とLactobacillus属細菌4株について、本オリゴ糖に対する資化性を調査する。2、N-アセチルスクロサミンを原料として用い、新規なN-アセチルグルコサミン含有オリゴ糖の酵素利用合成について検討する。 1の実験の結果から、Lactobacillus属細菌については、いずれもN-アセチルスクロサミンを資化できなかったが、Bifidobacterium infantisやBifidobacterium breve といった乳児の腸内に多く見られるBifidobacterium属細菌が特異的に本オリゴ糖を資化して良く増殖することが分かった。また、本オリゴ糖に少量のグルコースを一緒に加えることで、これらの細菌によるN-アセチルスクロサミンの資化・増殖がさらに促進された。この現象について詳細に調べたところ、グルコースを資化した後にSucNAcの資化が始まるという糖の2段階資化、いわゆるジオーキシーの現象が観察された。2の実験の結果から、高濃度でN-アセチルスクロサミンとメリビオースが溶解した溶液中にα-ガラクトシダーゼを添加し作用させることで、本酵素の糖転移反応によりガラクトースがα-グリコシド結合でN-アセチルスクロサミン中のN-アセチルグルコサミン残基の6位に結合したN-アセチルラフィノサミンを合成することができた。 これらの研究の成果については、平成26年度に開催された「精糖技術研究会」、「キチン・キトサンシンポジウム」、「応用糖質科学会大会」、および「日本農芸化学会大会」にて発表を行なった。また、2の実験結果については、日本農芸化学会学会誌である「化学と生物」に報告した。さらに、関連する研究の成果については「Journal of Carbohydrate Chemistry」に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において、平成26年度は、1、N-アセチルスクロサミンのプレバイオティクスとしての有効性について評価するため、人の腸内由来のBifidobacterium属細菌とLactobacillus属細菌の本オリゴ糖に対する資化性を調査することと、2、本オリゴ糖を原料として用い、新規なN-アセチルグルコサミン含有オリゴ糖をグリコシダーゼの糖転移作用を利用して合成することを目標に掲げた。 「研究実績の概要」にも記載したように、1の実験については、特定の乳児腸内由来のBifidobacterium属細菌がグルコース存在下でN-アセチルスクロサミンを良く資化して増殖することが明らかとなり、本オリゴ糖にプレバイオティクスとしての有効性があるここが確認できた。この結果から、1の研究については、当初の目標をおおむね達成できたと考えている。また2の実験については、N-アセチルスクロサミンを原料として用いることで、α-ガラクトシダーゼの糖転移作用により新規なオリゴ糖(N-アセチルラフィノサミン)を合成することができた。この結果から、2の研究についても、当初の目標はおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、次の項目について検討する予定である。1、Bifidobacterium属細菌やLactobacillus属細菌以外の腸内細菌(Clostoridium属細菌、Bacteroides属細菌、Eubacterium属細菌、Enterococcus属細菌)についても、N-アセチルスクロサミンに対する資化性を調査する。2、N-アセチルスクロサミン資化性Bifidobacterium属細菌から、本オリゴ糖の分解に関わる酵素を抽出・精製し、その諸性質について調べる。3、N-アセチルスクロサミンを添加した培地中で各種の腸内細菌を共培養し、そのような状態でどのような細菌が優先的に増殖するか調べる。4、N-アセチルラフィノサミンについて、効率的な生産法と精製法を検討する。5、N-アセチルスクロサミンを原料として用い、β-ガラクトシダーゼの糖転移作用により新規なオリゴ糖を合成する。 このうち、3の研究については、微生物フローラ解析を行なうこととなるので1年で達成できるか分からないが、場合によっては業者委託も視野に入れて行なうことを考えている。
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Research Products
(8 results)