2014 Fiscal Year Research-status Report
腸管を介した乳酸菌による関節リウマチ発症抑制機構の解明
Project/Area Number |
26450171
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 チセ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 上席研究員 (80343820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | rheumatoid arthritis / SKG mouse / Lactococcus lactis / Lactobacillus rhamnosus / CCR6 |
Outline of Annual Research Achievements |
予備実験として、SKGマウスおよびBalb/cマウス(SKGマウスはBalb/cマウスの一遺伝子変異株)にマンナン(10mg/100μl PBS)200μlあるいはPBS200μlを腹腔投与し、関節炎の発症を観察した結果、SKGマウスにマンナン投与区のみ2週間後から関節炎が発症し、RAモデルとして使用できることを確認した。次に乳酸菌を経口投与する本試験を行った。投与する乳酸菌はLactobaciilus rhamnosus GG(以下GG株)、およびLactococcus lactis subsp. lactis C59(以下C59株)を用いた。GG株はMRS培地、C59株はGM17培地による培養後、集菌してPBSで洗浄し、濁度をOD10(5×109 cfu/mlに相当)に調製し、一日分の投与量に小分けして-80℃にて保存した。本試験ではSKGマウス に飼育当初(7週齢)からGG株、C59株それぞれ200μl (109 cfu)/day(対照群はPBS 200μl)を連日投与した。投与開始2週間後(9週齢)にマンナン(20mg/200μl PBS)200μlを腹腔投与した。手足の腫れを指標にしたリウマチスコアは、対照群、C59株群ではマンナン投与2週間後から上がり、GG投与群では3週間後から上昇した。C59株群では有意ではないが、スコアは常に対照群より低い傾向がみられた。手足の腫れを測定した結果においても、C59株群の平均は対照群より低い値を示した。マンナン投与6週間後に採血、解剖、サンプリングを行った。膝窩リンパ節は採取後培養を行い、CD4、IL-10、IFNγ、IL-17について染色しフローサイトメトリーにより解析した。サンプリグした血清中のサイトカイン、糞便のIgA、小腸の遺伝子発現、関節の炎症の顕微鏡観察等については次年度行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階ではコラーゲン誘導関節炎を想定していたが、SKGマウスを用いることでより簡便に関節炎の発症が観察できた。腸管免疫に対して異なる応答を惹起可能な乳酸菌2株の投与を行った結果、有意ではないが予想通り免疫抑制に働くC59株においてより低いリウマチスコアや腫れの抑制が観察され、免疫賦活に働くGG株ではリウマチスコアは対照群と変わらないという結果が得られた。乳酸菌投与したマウスの解剖が3月末になったため、サンプリングを終えている試料の各種解析は27年度に持ち越しとなった。これらの解析によって、乳酸菌投与の効果が詳細な議論が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度にサンプリングした試料について、血清については各種サイトカインやリウマチ因子(RF)をELISAで測定する。小腸については免疫関連遺伝子の発現をRT-PCRで解析する。関節については切片を作成し炎症の観察を行う。糞便についてはIgAを測定する他、腸内菌叢についてもRT-PCRなどで違いがあるのか検討する。また盲腸内容物についても菌叢解析や短鎖脂肪酸など盲腸内代謝産物の解析を行い関節炎発症と腸内環境の関係を明らかにする。リウマチスコアでは有意な差が見られていないので、これらの解析結果と合わせて乳酸菌の投与量や関節炎誘導までの投与期間などを検討する必要がある。 SKGマウスへのマンナン投与による関節炎の誘導が、急性炎症であり乳酸菌投与では抑えきれないという可能性も考えられるため、より緩慢な誘導条件あるいは他のモデル系も合わせて検討する。
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Causes of Carryover |
全額執行したつもりだったが、試薬等の値引き(例えばELISAキットでは定価155,000円が執行額88,000円)により残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度にフローサイトメトリーを行うための蛍光標識抗体等を購入する。
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