2014 Fiscal Year Research-status Report
必須アミノ酸による食品有害細菌の増殖抑制効果:作用機構の解明と予測モデルの開発
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26450173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小関 成樹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70414498)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Dトリプトファン / 適合溶質 / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸添加によって誘導される細菌の増殖抑制効果を利用して,食品の安全性確保を向上させるとともに,不要な食品廃棄を減少させるために,微生物学的な安定性を増大させ,日持ち期間の延長を目指す。本申請研究では作用メカニズムを解明したうえで,効果的・効率的な利用方法を確立し,食品製造工程への適用方法を明らかにする。さらに,種々の条件下での最適な利用方法を提示可能とする数理予測モデルを構築して,実用化へ向けた情報提供を実現することを目的とする。H26年度はトリプトファンなど数種アミノ酸が,有害細菌の増殖抑制を誘導するメカニズムの解明を目的とした。特に,食中毒細菌ならびに腐敗原因菌を対象として,トリプトファン等のアミノ酸添加による増殖抑制効果の発現メカニズムを,菌体内のアミノ酸含量の変化に注目して解明することを目的とした。 細菌細胞内のトリプトファン含量を定量化する方法を確立した。すなわち,ビーズクラッシャーによる細胞破砕法を用いて,菌体内の成分を溶媒中に抽出して,その抽出液を高速液体クロマトグラフによるポストカラム誘導体法によるアミノ酸分析を行うことによる定量化手法を確立した。 その結果,グラム陽性菌の一つであるEscherichia coli ではトリプトファン添加培地中で培養した場合に,菌体内のDトリプトファン濃度が有意に上昇していることが確認された。このことから,Dトリプトファンによる増殖阻害の作用機構の一部を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細菌細胞内のトリプトファン含量を定量化する方法を確立することができて,グラム陽性菌の一つであるEscherichia coli ではトリプトファン添加培地中で培養した場合に,菌体内のDトリプトファン濃度が有意に上昇していることを確認できた。これは,当初の予定どおりであり,本結果をもとに次年度以降のより深い研究へと発展することが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,アミノ酸の作用メカニズムを基礎とした,食品製造過程における最適な利用方法の解明について,検討する。具体的には,解明した作用メカニズムを基礎として,実際の食品製造を想定した効果的・効率的な利用法を明らかにする。具体的には低温殺菌を前提とする業務用加工液卵や牛乳などの液状食品の他に,各種の惣菜類(煮物,和え物など)や生野菜サラダのような固形食品における増殖抑制効果ならびに,品質(食味,外観など)に及ぼす影響を明らかにする。細菌の増殖抑制効果と食品品質への影響を総合的に考慮した最適な利用方法を見出すことを目的とする。 本研究は,これまで確認されていなかったトリプトファンをはじめとする必須アミノ酸による有害細菌の増殖抑制効果を,世界で初めてその作用メカニズムならびに効果的・効率的な利用方法をin vitro系だけでなく,実際の食品系においても明らかにするもので,従来のアミノ酸に関する知見を大幅に拡張することになる。既存の食品素材を用いた技術であることから,新たな微生物制御技術として,実用化の可能性が極めて高い。また,アミノ酸添加による細菌増殖抑制効果を,数理モデルとして種々の環境条件から予測可能とする試みは,他に類を見ない研究である。 本研究は学術面での新規性のみならず,実用面でも食品産業界に大きな波及効果をもたらす可能性が期待されるものである。
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Causes of Carryover |
使用予定の試薬類,カラム類が販売店のキャンペーン等で,想定以上に安価であったために,残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
継続して使用する分析用の試薬類,カラム類の購入にあてる。
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