2014 Fiscal Year Research-status Report
赤ワインのアントシアニン抽出に対するブドウ果皮のマトリクス効果
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26450175
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥田 徹 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10252008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ワイン / アントシアニン / タンニン / マセレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
Cabernet Sauvignonブドウの着色が不良だったため、Merlot及びMuscat Bailey Aを使ったモデル実験を実施した。ブドウより果皮マトリクスを調製し、果皮から調製したアントシアニン類やタンニンとの結合実験を行ったところ、果皮マトリクスへのこれらの結合を確認した。このことから、ワイン製造中に果皮や種子から抽出されるポリフェノールの一部は、果皮マトリクスに結合すると考えられた。 アルコール濃度やpHなどが結合に与える影響を調べたところ、アルコール濃度は低いほど、またpHは低いほど結合能力が高くなった。また、結合するアントシアニン類をHPLCで分析したところ、極性の低いアントシアニン類(アシル化されたもの等)は結合によりワインから消失するが、比較的親水性のアントシアニン類(シアニジン3グルコシド、デルフィニジン3グルコシドなど)は、比較的抵抗性を示すことが分かった。 醸造中のアントシアニンやタンニン類の吸着の程度を調べるため、ワインを製造し、マスト中の果皮のアントシアニン濃度などを分析した。その結果、果皮中のアントシアニン類は急速にワインへ移行するが、疎水性の化合物ほど抵抗性を示し、親水性の化合物が速く抽出された。一方、一度溶出されたアントシアニンやタンニン類が、果皮マトリクスに再吸着することを期待したが、再吸着量は少ないようで、全体として、抽出したポリフェノールがワイン製造中に減少する理由については、明確な理由がわからなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モデル実験は順調に推移し、アルコールやpHが大きな役割を持つことが明らかになった。これまでの知見では、水素結合と疎水結合が重要であると考えられてきたが、特に疎水結合の重要性が明確化した。また、H27年度に実施する予定の発酵実験を一部行うことができ、予想以上に再吸着の可能性が低いことが明確になった。一方、タンニンの構造については、加水分解率に問題があると思われる。原因はよくわからないが、塩酸による加水分解以外に、水酸化ナトリウム等のアルカリ加水分解なども考える必要がありそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
疎水結合の重要性が考えられたが、醸造実験では系内のポリフェノールの合計量が減少している。このことは、アントシアニンとタンニンの結合以外に、果皮マトリクス等との結合により、ポリフェノールの定量に用いられるFolin-Ciocalteu法では測定できない複合体が形成している可能性も考えられた。そこで、これらの点については、オレゴン州立大のKennedy博士らに相談する予定である。このためにも、予定を前倒し、H27年度に現在の結果をアメリカブドウ・ワイン学会で発表する予定としている。 実験自体の方向性には変化がないと思われるので、H27年度は、ワイン醸造実験と、果皮マトリクスの構造決定と吸着機構の解明を進めたい。
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Remarks |
http://erdb.yamanashi.ac.jp/rdb/A_DispDetail.Scholar
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