2014 Fiscal Year Research-status Report
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26450180
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
金内 誠 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (70404845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 抗ストレス / 脂肪酸取り込み / オレイン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳酸菌の脂肪酸取り込みによる抗ストレス性について検討した。オレイン酸をヒドロキシル化する能力が高いLactobacillus sakei Y-20株において、比較的低温(4~15℃)条件下で、ステアリン酸を取り込ませた系では、良好な生育を示し、無添加のものは、その40%ほど、オレイン酸を取り込ませた系では、ステアリン酸を取り込ませた系の50%ほどであった。これに対し、45℃以上の高い温度条件下ではパルミチン酸、オレイン酸とリシノール酸を取り込ませた系では、無添加と比べ、最大で20倍ほど生存率、増殖率ともに高かった。 アルコール類に対し、オレイン酸を取り込ませた系では、増殖率と生存率が向上した。特に15%エタノール中、10%メタノール中で、標準株やY-20株の他の脂肪酸を添加させた系では、ほとんど生育できなかった。しかし、オレイン酸を取り込ませたY-20株のみが、生育し、高い生存率だった。 pH耐性においても、Y-20株は、脂肪酸を取り込ませることで、増殖率と生存率が向上することが確認できた。pH2.0条件下において、Y-20株は、標準株と比べて、リノレン酸、パルミチン酸、オレイン酸を取り込ませた系において、増殖率と生存率が向上した。また、pH9.0において、リシノールを添加した系において、Y-20株は増殖率と生存率を向上した。金属イオンのストレスに対しても検討した。その結果、10mMの銅イオンを添加した培地の系のみに相違が見られ、オレイン酸を取り込ませたY-20株は増殖率と生存率が向上することが確認できた。 一般的に、酵母などの微生物は、膜脂質の不飽和度の上昇に伴い、ストレス耐性が付与されると考えられていたが、本研究の結果、Y-20株は、リノレン酸より不飽和結合の数が少ないオレイン酸を取り込ませることで、ストレス条件下での増殖率と生存率が上昇することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、菌体内ヒドロキシ脂肪酸蓄積量の測定と局在性の検討と抗ストレス性と脂肪酸との関係について明らかにすることとしている。昨年度の結果において、「Lactobacillus属の乳酸菌の脂肪酸取り込みによる抗ストレス性は、取り込んだ脂肪酸がヒドロキシル化するためである」ということを証明するために、主に温度ストレス、アルコールストレス、金属ストレスについて検討し、明らかにした。 実験計画ではアルコール類や金属イオンなど、種類を多く行い、結果が得られる予定であった。しかし、これまでの研究結果において、脂肪酸種を変えても、増殖などに変化がないなどが見られた。 2価の金属イオンのストレス条件下では、脂肪酸を添加した場合、銅イオンのみが有意なデータが見られた。また、アルコール耐性において、狭い幅の濃度条件下でのみ生育に違いが見られた。脂肪酸の蓄積についても、菌体内に多くの脂肪酸をため込むことが予想された。そこで、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、取り込んだ脂質の局在性について詳細に検討する予定であった。しかし、研究を進める過程で、脂肪酸は乳酸菌の本体表層に多く見られ、菌体表層に脂肪酸が吸着されているようであり、計画した研究データを得ることができなかった。 しかし、このような一連の研究で、本来オレイン酸をヒドロキシ化させる能力が高い乳酸菌がオレイン酸を取り込み、さまざまなストレスに対して抵抗性を示すことが示唆され、オレイン酸が表層タンパク質上で何らかの作用を受けることできた。乳酸菌の抗ストレス性を示す結果が得られた。よって、本研究の26年度の目的をほぼ達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、脂肪酸ヒドロキシ化酵素をコードするFAHと、これまでヒドロキシ脂肪酸を中間物質とし、共役脂肪酸へ変換することが知られているCALA1あるいは2の発現量を検討し、抗ストレス性と脂肪酸との関係について明らかにすることとしていた。そのために、各種乳酸菌を培養後、Total RNA を抽出し、ハウスキーピング遺伝子としてG3PDHとFAH、CALAをRT‐PCR法で発現量を測定し、FAH/CALA比を算出し、抗ストレスと発現量について明らかにする予定であった。しかし、本研究で用いたLactobacillus sakei Y-20株のオレイン酸からの共役脂肪酸の変換率を検討したところ、ほとんど共役脂肪酸が生成していなかった。このことより、共役脂肪酸変換酵素が作用していないと考えられた。さらに、共役脂肪酸変換酵素をコードしているCALAも発現していないと考えられる。 一般的に、Lactobacillus属は、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を、まず、ヒドロキシ化し、さらに引き続き、共役脂肪酸にまで変換されることが報告されている。しかし、これらの株はオレイン酸を特異的にヒドロキシ化され、それ以上の表約脂肪酸への変換は起こらなかった。一方で、本検討結果、オレイン酸を取り込むことで抗ストレス効果を示すことが分かった。 そこで、これまで計画を変更し、FAHをクローニングし、塩基配列を明らかにして、この塩基配列情報をもとに、定量RT-PCR法にて、各培地で培養した各菌体(対数期前期、後期)のFAHの発現量を測定し、各ストレスの関係を明らかにすることとする。 さらに、ヒドロキシ脂肪酸が乳酸菌の抗ストレスに関与することを明らかにするために各ストレスカセット法によって、FAHを完全に遺伝子を破壊した非発現Y-20 ΔFAHを作成し、ストレスに対する影響を検討する。
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Causes of Carryover |
購入予定していた蛍光分光光度計の購入に際し、本体の仕様や、その他干渉フィルターなどの付属品などを選定し、想定機種を大学の規定に従い入札を行った結果、想定していた金額より、低価格で調達できたため金額残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、Y-20ΔFAHの変異体の作成やクローニングなどの研究に取り込む予定で、試薬などの購入にあて、研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(1 results)