2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450180
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
金内 誠 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (70404845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / ヒドロキシステアリン酸 / オレイン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳酸菌 YK 20株を低栄養培地、低温条件下のストレス環境下で培養したところ、オレイン酸を90%以上ヒドロキシ化した。これらヒドロキシ脂肪酸の生成が抗ストレス性に関与していると考えられた。そこで、本研究ではストレス環境下の乳酸菌培養を行った時の脂肪酸の取り込みとヒドロキシ脂肪酸への変換が、ストレス体制にあたえる影響について検討することとした。 これまでの結果において、YK20株は、オレイン酸を添加した培地中では、温度ストレスやpHストレス、アルコールストレス、金属イオンによるストレス条件でも生育できることがわかった。また、YK20株はオレイン酸を取り込みことで、ストレス耐性を得た。このようなストレス条件では、培地中のオレイン酸はヒドロキシステアリン酸へ高変換した。 申請時に想定したYK56株は、菌種の同定の結果、YK23と微生物学的に種が異なっていた。種が異なることでその菌種特性が異なり、解析が難しくなると考えられる。そこで、YK23株のみをターゲットとした。また、YK23株は、オレイン酸を共役脂肪酸への変換はなかった。そこで、YK23株のオレイン酸をヒドロキシステアリン酸に変換する酵素であるヒドロキシ化酵素(FAH)のみの発現量を、real-time RT-PCR法にて測定した。オレイン酸含有培地で、15℃培養した菌株のヒドロキシ化酵素の発現量は、完全培地MRS培地、30℃において培養させたコントロール系と比べ、2.3倍高かった。鉄イオンを加えた培地でも2.1倍高かった。一方、オレイン酸以外の脂肪酸では、FAHの発現量は減少した。一方、銅イオン存在条件で培養したYK20株は、コントロールと比較し、ヒドロキシ化酵素の発現量が減少し、0.14~0.56倍であった。 このように、オレイン酸を変換することでエネルギー獲得や抗ストレス性に関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に想定したYK56は、同定の結果Lactobacillus plantrumで、オレイン酸をヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシルステアリン酸)へと特異的に変換するYK20株 Lactobacillus sakeiと種が異なっていた。このように種が異なることで、その菌株の特性も異なる。そこで、YK20株のみを用いて、培養条件時のストレスと膜表層ヒドロキシ化脂肪酸との関係を明らかにした。 また、同様に申請時には、YK20株の共役脂肪酸にかかわる酵素CALAの発現量を検討する予定であった。しかし、YK20株は、オレイン酸を添加した培地において、菌体から共役脂肪酸は、検出できなかったまた、Y23株のCALAをコードしている遺伝子をPCRにて増幅を試みたところ、増幅しなかった。そこで、YK20株は CALAを持たないと考えられた。 本研究ではFAHを変換するfahをrtPCRにて測定することとした。そのために、fah遺伝子の塩基配列も検討した。その結果、このタンパク質をコードするDNAの塩基配列は1200bpで、nlpC/P60 family proteinと相同性が高かった。この配列をもとにrtPCRにて発現量を測定することができ、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、最終的な目標として、培養時のストレスに対して抵抗性を持つために脂肪酸をヒドロキシ化させるという仮説を立証することである。そこで、これまで本検討では温度、pH、アルコール、金属などのストレス条件下で培養させ、生育や死滅率などの検討を行ってきた。その結果、オレイン酸を添加させることで、ストレス耐性を得ることができた。また、このときのヒドロキシ脂肪酸量やこのヒドロキシ脂肪酸を生産・変換する酵素FAHの発現量を測定したところ、菌体中のヒドロキシ脂肪酸量が増加し、FAHの発現量も上昇する傾向があった。 さらに、FAHの耐ストレス性の視点からの微生物学的意義について検討するため、YK23株を親株としたFAHを発現しない欠損株の育種についても検討する。欠損株の育種は、これまで明らかにしたFAHの塩基配列情報をもとに、カセット変異導入法にておこなう。FAHをコードするDNA配列に異種のDNA断片を導入することで欠損させた株を得る予定である。 これによって、FAHによるヒドロキシ脂肪酸が生産できなくなると考えられる。この菌株の温度ストレスや培地中のpHストレス、アルコール、金属などのストレス条件下での生育速度の違いについても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、乳酸菌菌体のストレス時の生存と、その時のFAHの発現についての検討を行っていた。またこの時も用いたrtPCR試薬などを多めに見積もっていたが、研究が順調に進んでおり、使用する試薬や酵素が予想に反して、使用量が少なくて済んだ。そのために少額ではあるが余剰金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した余剰金は、本年度研究をまとめる際の投稿費用や本年度計画している研究のための酵素や脂肪酸などの挙動を検討するための蛍光試薬などの使用する予定である。一般に海外のジャーナルにおいて投稿費用が高騰しており、余剰金8936円は相殺されると考えられる。
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Research Products
(2 results)