山地流域における雨量計により捕捉されない降雨量の推定手法の開発

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26450189
• Research Institution: Tokyo University of Agriculture and Technology
• Principal Investigator: 若原 妙子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (70599589)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: 降雨捕捉率 / 山地斜面 / 降雨分布 / ブナ林 / 雨量計 / 林内雨

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、雨量計の雨滴捕捉率を低下させる要因を明らかにし、その影響を定量評価することである。そのため、初年度および次年度で以下の2課題を実施する。1.降雨捕捉率に影響する要因の現地観測体制を整える。2.観測データを解析し、それらが降雨捕捉率に与える影響を定量的に評価する。初年度となる平成26年度は、主として上記課題1を行った。具体的には、
(1)神奈川県丹沢山地堂平地区周辺の上空が開空した場所で、谷斜面と平坦地に雨量計、風向風速計および温湿度計を設置しデータを取得した。雨量計近傍に開口部面積0.8㎡の雨量検定装置を設置し雨量データを取得した。また、落葉・着葉により樹冠の開空率が季節変化する壮齢ブナ林内にプロットを作成し、雨量計25個を均等に配置し樹冠通過雨のデータを取得した。ブナ林内プロットに風向風速計および温湿度計を設置しデータを取得するとともに、林内雨把握のため主要なブナの樹幹流量を測定した。雨量計では捕捉しにくい霧状の林内雨の観測体制を整えた。
(2)大学構内の上空が開空した平坦地に雨量計、風向風速計および温湿度計を設置しデータを取得した。雨量計近傍に開口部面積0.8㎡の雨量検定装置を設置し、降雨量を測定した。
(1),(2)の観測機器は5月から10月にかけて順次設置し月2～4回の頻度で現地観測を行った。
観測値の解析から、V字谷斜面では1降雨が3mm以下のときに検定装置と比べて雨量計への降雨捕捉率が低下した。またV字谷斜面で観測された雨量は近傍のブナ林や標高の高い平地で観測された雨量に比べ少なく、谷斜面における地形や風速分布の影響が考えられた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成26年度は山地斜面および平坦地での観測はおおむね順調に進んだが、観測機器の設置遅れや観測機器の不調により一部のデータが取得できなかった。そのためデータ解析にやや遅れが生じている。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度は降雨捕捉率把握のため、各調査地で観測データを継続的に取得する。特に前年度のデータ取得が遅れた項目の観測に重点をおく。これまで取得した気象データの整理および解析をすすめる。地形と風速に着目し、平坦地・斜面・森林などの異なる環境下において降雨捕捉率に影響する要因を解析する。

Causes of Carryover

平成26年度は前年度の豪雪の影響で山地の観測体制に一部遅れが生じ、そのため測器・資材の購入遅れが生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成26年度の残額と併せて観測機器やその維持管理およびデータ解析に必要な物品の購入を計画している。また国内外の学会で発表を行うため、旅費への使用を計画している。