2014 Fiscal Year Research-status Report
水系ネットワークにおける渓流魚の空間的動態と森林のパッチモザイク構造との関係
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26450197
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井上 幹生 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (10294787)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 渓流魚 / アマゴ / 人工林 / 渓畔林 / 分断化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、天然林(落葉広葉樹)と人工林(スギ、ヒノキ)から成るパッチ・モザイク構造が渓流魚(アマゴ)個体群の空間的動態(成長、移動・分散、繁殖)とどのように関わっているかを水系ネットワーク全体で捉えることを目的としている。 2014年度は、愛媛県の石手川源流域に2つの調査流域を設定した(集水域面積2-3km2, 総流路長2.4-2.5km)。一つは複数の治山ダムによって著しく分断化され魚類の移動に制限がある流域(分断水系)であり、もう一方は、分断化されていない流域(連続水系)である。両流域の流路全体を50 m区間に分割し(連続水系49区間, 分断水系48区間)、各区間において、5月(当歳魚の新規加入時期)、7月、9月(繁殖期の前)にアマゴの個体数(標識調査を含む)に関する調査をおこなった。また、各区間の渓畔林タイプ(天然林/人工林)の特定を行うとともにいくつかの環境特性に関する調査も行った。まだ完全には解析していないが、連続水系では、新規加入時期である5月から繁殖期前の9月にかけて、高密度区間から低密度区間へと分散する明瞭な傾向が認められた。すなわち、水系全体での密度の均一化が起こっており、アマゴ個体群は水系全体を効率的に利用していることが示された。今後、この分散過程(均一化)と各区間の渓畔林タイプとの関連性を解析することにより、アマゴ個体群の動態における天然林パッチの機能を明らかにしていく予定である。分断水系においても同様な高密度区間から低密度区間への分散を示す傾向がみとめられたものの、移動阻害構造物によって水系全体の効率的利用が阻害されていることが示唆された。前年度から行っている予備的な調査結果も併せて、今回の知見の一部を日本魚類学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、2014年度に既存データ(2011~2013年)を解析することにより、アマゴの移動(残存)と成長を人工林と天然林との間で比較する予定だったが、データの整理は進んだものの解析完了には至らなかった。この点において、予定より遅れていることになる。一方、野外調査については、2014年度は連続水系での調査を行い、分断水系の調査は2015年度以降に行うのが当初の予定であったが、分断水系の調査を前倒しにして2014年度から開始した。この点においては予定よりも進展していることになる。これら2つの側面を考え合わせると、「概ね順調」と言えるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、遅れている過去データの解析完了を目指す。 当初予定では、石手川の連続水系での調査に着手した後に条件の異なる流域(分断水系と天然林優占水系)での調査を行うことにしていたが、上記のように前倒しで開始した分断水系での調査を継続するとともに、できれば、2015年度に天然林優占水系での調査にも着手する。 当初は予想していなかったが、水系全体を50m区間に分割して魚類の時空間動態を把握するという今回の手法に、(1)対象水系における魚類の環境収容力を導くことができる、(2)渓流魚の近縁種間(アマゴとイワナ)での相互作用の検討に応用することができる、という可能性が見出された。今後は、この2点も視野に入れた研究へと展開させたい。ただし、当初の研究計画を大きく変更するものではない。
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Causes of Carryover |
当初は電気漁具の購入に140万円を見込んでいたが、新たに発売されたモデル(購入予定していたモデルよりも安価)を購入したことにより、電気漁具購入額が当初予算額を下回った。その後、電気漁具の故障・修理費用という予想外の費用も必要となったものの最終的には若干の未使用額が残ることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査用消耗品(漁具、ドライスーツなど)の購入費用の補助に充てる。
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Research Products
(1 results)