2014 Fiscal Year Research-status Report
ストイキオメトリーを用いた森林生態系の窒素飽和の評価
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26450198
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
智和 正明 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30380554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 篤 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20325492)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 窒素飽和 / リン制限 / ストイキオメトリー / 蛇紋岩 / 森林生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,大気由来の窒素沈着量が増加し,森林生態系が窒素飽和することが懸念されている.しかし,そのような窒素飽和は渓流水中の硝酸塩濃度から間接的に判断されることが多く,森林を構成している樹木が窒素飽和しているかは状況証拠にとどまっている.樹木が窒素飽和しているかを明らかにすることは,森林からの栄養塩流出に対する適切な措置を講じる上でも重要である。 そこで本研究では,渓流水中の硝酸塩濃度が高い流域で樹木が窒素飽和しているかどうかを明らかにすることを目的とした.窒素飽和の評価法として,ストイキオメトリー(窒素:リン比, N:P比)を用いた.その際に,蛇紋岩流域に着目した.蛇紋岩はリン含有量が少なく,窒素沈着の増加によってリン制限になりやすい可能性があり,窒素飽和が起こりやすい対照サイトとしてのN:P比を知ることができる可能性がある. 初年度は,蛇紋岩流域(御手洗水)でヒノキ葉の化学分析を行い,葉中の窒素(N):リン(P)比と地形との関連について統計解析した.葉の採取は7月下旬に,流域スケールで合計27サイトの枝葉を採取した. その結果,御手洗水流域全体におけるヒノキ葉のN:P比は平均で21±5 であり,この値は報告されている温帯林(9.6)よりもかなり大きく,リン制限である熱帯林(19.6)と同程度だった.したがって,御手洗水流域が窒素飽和にともなうリン制限が起こっている対照サイトとして位置づけることができる可能性が高い.また,流域内のN,P濃度やN:P比の空間分布について統計解析した結果,葉中P濃度やN:P比は凹凸度と対応関係がみられ,凸型地形でP濃度が低く,凹型地形でP濃度が高い傾向がみられた.一方でN濃度と地形に対応関係は見られず,その結果,N:P比は凸型地形で低くなる傾向がみられた.この結果は,窒素沈着による窒素飽和の起こりやすさが地形によって異なることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに試料の採取と分析が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに渓流水中の硝酸塩濃度の異なる流域における樹木のストイキオメトリーの比較を行ないたい.
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