2016 Fiscal Year Research-status Report
海の島と陸の島に棲む希少鳥類・コマドリの地域的減少が遺伝的多様性に及ぼす影響評価
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26450208
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
関 伸一 国立研究開発法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (50343801)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コマドリ / 地域的減少 / 亜高山 / 島嶼 / 下層植生 / ミトコンドリアDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
コマドリは山地の森林と一部の島嶼の森林に生息する日本周辺地域に固有の種であるが、ササ類など下層植生がよく茂った場所を好んで繁殖するため、近年のニホンジカの増加にともなって下層植生が衰退した地域においては個体数の減少と生息地の縮小が懸念されている。本研究課題ではコマドリの主要な生息地を対象に、5年間にわたる野外調査によりコマドリの生息状況と下層植生衰退との関係を明らかにするとともに、保全遺伝学的手法によって各地の集団の歴史と遺伝的多様性について解析する計画である。当年度は、各地のコマドリの生息情報収集を継続するとともに、中部地方、関東地方、伊豆諸島中部、北海道中部および北部(利尻島)において生息状況調査と捕獲調査を行った。中部地方と関東地方の調査地では下層植生の衰退が顕著でコマドリの生息密度も低かったが、北海道中部では部分的に下層植生の衰退傾向は認められたもののコマドリの生息密度は比較的高く、伊豆諸島と利尻島では大型草食獣が生息せず下層植生が密でコマドリの生息密度も高いことが確認された。これら3地域の合計6ヶ所で許可を得てコマドリを捕獲し、翼長・尾長・ふしょ長など体サイズに関わる部位の計測と遺伝子試料の採集・分析を行った。これまでに収集できたデータと試料の中間的な分析では、一部に地域固有の系統群は見られたが地域間の遺伝的分化は明瞭ではなく、また、計測値の一部にも地域的な変異は認められるものの地理的な変化傾向は明らかではなかった。そのため次年度以降も全体計画に沿って野外調査を継続し、生息状況の調査範囲を広げるとともに、各地の集団でのデータを得るための捕獲調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度に計画していた中部地方、関東地方、伊豆諸島、北海道本土および島嶼部の各地域において、野外での生息状況調査と捕獲調査を実施することができたため、おおむね順調に進展していると考える。対象種の生息密度は低いが、調査努力量を増やすことで計画どおりに捕獲データの収集も実施できており、試料の分析も研究期間の終了時までには完了の見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もおおむね計画どおりに研究を推進できる見込みである。ただし、本州以南におけるコマドリの生息密度の低下が当初の予想以上であったため、将来の生息地保全のための資料として現在の生息状況の記録をできる限り広く蓄積するよう努めている。一方で、対象種の生息密度が低いことに加えて、捕獲調査に関連する許認可(捕獲、自然公園、国有林)の管轄が細分化されて許可取得に多大な労力を要しすることから、捕獲調査の対象地域は研究目的の達成に支障のない範囲で絞り込んで研究を進めている。島嶼集団間の集団構造解明のためには、当初計画になかった進化速度のより早い遺伝子マーカーの補助的な使用についても検討している。
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Causes of Carryover |
当初計画した遠隔地や島嶼での野外調査が順調に進行して旅費が見込みより圧縮されたが、調査適期内(コマドリの繁殖活動が活発な5月後半から7月)に追加の捕獲調査を計画するには関連許可を取得するための時間が足りなかったため、次年度の野外調査を効果的に実施するための旅費に加えた方が有効であると判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の旅費と合わせて、天候の影響をとりわけ強く受ける島嶼部での野外調査を確実に実施するための日程確保に使用する。
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