2014 Fiscal Year Research-status Report
落葉堆積量の違いが林床の濁水ろ過機能におよぼす影響の解明
Project/Area Number |
26450211
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
阿部 俊夫 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (10353559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 濁水 / 微細土 / ろ過 / 森林 / 落葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為的要因などで山地から河川へ流出する濁り(微細土、浮流土砂)は水質悪化や水生生物への悪影響をもたらすが、森林の林床、特に落葉堆積には濁水をろ過する機能があることが知られている。本課題では実験的手法で林床の濁水ろ過機能を定量化するとともに、人為的に落葉堆積量を増やし濁水ろ過機能を向上させることが可能かについて検討する。 1年目である当年度は、岩手大学御明神演習林内の落葉広葉樹林とスギ林に調査地を設け、広葉樹林で濁水ろ過実験を3回おこなった(スギ林での実験は次年度)。濁水ろ過実験では2本の水路(幅0.3 m×長さ2.0 m)を設け、それぞれ約1000 Lの濁水をおおよそ10 L/minで流し、流出する濁水量を調べた。濁水の製作には、カオリン粘土5.00 kgを用いた(濃度約5000 ppm)。初回(9月)の実験では、カオリンの大部分をろ過することができ、流出阻止率は約90 %と極めて高かったが、11月では約80 %まで低下した。今のところ、秋の落葉供給や時間経過による機能回復は認められず、実験を繰り返すにつれ阻止率は低下していることから、1~2ヶ月という短期間では目詰まりした林床のろ過機能は回復できないと考えられる。最初の計画では落葉広葉樹林での実験は当年度で完了であったが、一冬経過後のろ過機能の変化を次年度に調査する予定である。 また、秋に広葉樹林とスギ林の調査地にリタートラップを15個ずつ設置して、ろ材となる落葉などのリターフォール量の調査をおこなうとともに、落葉移動に関係する林床植生の被度、斜面傾斜、地表付近の風速についても調査した。翌春、同じ箇所の林床リター堆積量について調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた国有林内に濁水ろ過実験の適地が見つからなかったが、岩手大学の協力により演習林内に調査地を設けることができた。濁水ろ過実験については、当初想定していた濁水流量では地表流がまったく発生せず失敗となったが、濁水量の増加や水路サイズの見直し等により9月上旬に実験を成功させることができ、予定していた3回の実験を11月までに完了することができた。また、林床へのリターフォール量の調査と、それに関連する林床植生被度、斜面傾斜、林内風速などの調査も予定通りに完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
スギ林については、計画どおり次年度に実験水路を設置して濁水ろ過実験を開始する。さらに広葉樹林についても、計画を変更して、追加のろ過実験を実施し、その後の自然降雨による実験水路からの地表流発生も観測する(林床の目詰まり回復過程を見るため)。広葉樹林では期待していた秋の落葉供給によるろ過機能の回復が認められなかったが、一冬経過後でもろ過機能に変化がないのかを追加のろ過実験により確認する。 また、計画では実験水路等の透水係数を調査する予定であったが、代わりに現地浸透能を様々な林床で測定し、ろ過機能の目安として利用可能か検討を開始する予定である。林床の落葉堆積量調査(春)や人工物による落葉堆積促進実験については、計画どおり次年度に実施する。最終年度についても、当初計画に従って研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
調査地を極めて近い場所に設定できたことが大きな理由である。計画段階では片道50km圏内(高速道路使用)の国有林を候補地としていたが、国有林内に適地が見つからず、最終的に岩手大学の御明神演習林(岩手県雫石町)内で研究を行わせてもらうこととなった。御明神演習林までは東北支所から片道25km程しかなく、調査に関わる費用のうち、旅費(日当)と高速道通行料が不要となり、ガソリンなど燃料費も半分で済むこととなった(ガソリン値下がりも一因)。 また、バルブ付き面積流量計2台を購入予定であったが(10万円前後)、これを中止したことも影響している。これは濁水ろ過実験で流量を一定とするための器機であったが、メーカーとの打ち合わせの結果、本課題の実験条件ではこの器機で流量一定にはできないことが分かったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画になかった調査や追加の濁水ろ過実験などをおこなうために使用する。カオリンクレー、ろ紙などの消耗品や現地調査の燃料代が余分に必要となるほか、新たに購入や製作が必要となる調査器具がある。たとえば、現地浸透能試験では市販品のない調査器具の製作が必要である。自然降雨による地表流発生の観測でも林床での雨滴の跳ね返りを遮断するための調査器具を自作する必要があるほか、林内・林外での降雨量の観測装置なども用意しなければならない。
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