2015 Fiscal Year Research-status Report
落葉堆積量の違いが林床の濁水ろ過機能におよぼす影響の解明
Project/Area Number |
26450211
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
阿部 俊夫 国立研究開発法人 森林総合研究所, 東北支所, 主任研究員 (10353559)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 濁水 / 微細土 / ろ過 / 森林 / 落葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
人為的要因などで山地から河川へ流出する濁り(微細土)は水質悪化や水生生物への悪影響をもたらすが、森林の林床、特に落葉堆積には濁水をろ過する機能があることが知られている。本課題では実験的手法で林床の濁水ろ過機能を定量化するとともに、人為的に落葉堆積量を増やし濁水ろ過機能を向上させることが可能かについて検討する。 昨秋から引き続き6月、7月にナラ林で濁水ろ過実験をおこなった。さらにスギ林内にも実験水路を製作し、9月から濁水ろ過実験を開始した。ナラ林では実験の繰り返しで、懸濁物の流出阻止率が90%前後から75%前後へ低下した。ただし、越冬後の6月、7月の実験では阻止率低下が緩和されており、リターの細片化でフィルター機能が高まったか時間経過にともなう目詰まりの改善による効果と推察される。また、懸濁物のろ過速度は見かけの浸透能と正の相関があり、対数関数で近似できた。簡易な浸透能試験でろ過機能を推定できる可能性がある。スギ林でのろ過実験の結果も、今のところ、ナラ林と同様の傾向を示している。 林床リター堆積量に関する解析では、リターの多くを占める広葉や針葉では風や傾斜、林床植生、前年のリターフォール量の影響が認められた。林床植生に見立てた人工物(園芸用支柱、ネット)を秋に設置し、ろ材となるリター堆積量を増加させることができるか実験を開始した。 さらに、ナラ林において実験後の水路跡からの濁水発生状況も調査した。以前に調査した間伐跡地の結果と比較すると、実験水路からの微細土流出量は林業機械が走行した林地より少ないが、未撹乱林地よりも多かった。濁水流入の著しい箇所では目詰まりした林床が新たな濁水発生源となる恐れもあると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に計画していたスギ林での濁水ろ過実験や人工物による落葉堆積促進実験など主要な作業は予定通りに実施できた。林床の透水性の調査は遅れているが、一方でナラ林のろ過実験延長や実験後の林床からの地表流発生状況の調査など当初計画になかった作業もおこなっており、全体としてはおおむね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度も基本的には計画に従って研究を推進していく予定である。ただし、スギ林内の濁水ろ過実験についてはナラ林と同様に夏前まで継続してから、スギ林のろ過機能を定量化する。その後、ナラ林とスギ林に新たな実験水路を各1本作り、人為的にリター堆積量を増加させた条件で濁水ろ過実験をおこない、リター堆積量がろ過機能におよぼす影響を解明する。また、現地浸透能を測定し、ろ過機能の目安として使えるか検討する。
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Causes of Carryover |
前年度の報告でも述べたように、調査地を想定より近い場所に設定でき、交通費等が少額の燃料代のみで済んだことが大きい(高速道通行料や旅費は不要)。ただし、濁水ろ過実験の追加実施や地表流発生状況調査など、当初計画にない作業で費用が掛かっているため、全体としては6万円程度の残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基本的には当初の計画に従って使用する。ただし、以前から保有し当該課題に使用している自動撮影カメラが老朽化等で更新が必要となったため、後継機種の購入を予定している。次年度使用額は自動撮影カメラの更新費用の一部とする。
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