2015 Fiscal Year Research-status Report
材内穿孔虫スギカミキリの幼虫は温度で季節変化を予測して生活史を調節するのか?
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26450217
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
北島 博 国立研究開発法人 森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, チーム長 (70353662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
逢沢 峰昭 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70436294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 穿孔性害虫 / 生活史調節機構 / カミキリムシ / 休眠 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギカミキリは重要な人工林の害虫である。温暖地では通常1年1世代であるが、幼虫が低温を感受すると蛹化を抑制して2年1世代の生活史となる可能性が示されている。このため、スギカミキリの生活史は温暖化の影響を大きく受けることが予想される。温暖化影響を判断するには、スギカミキリの生活史調節機構を解明して、被害予測に受け渡す必要がある。 一般に、多くの昆虫では生活史調節に日長を利用し、温度を利用することは珍しい。そこで、スギカミキリの蛹化において、日長が与える影響を飼育条件下で調べた。まず、一定の長日または短日が蛹化に与える影響を調べ、その後、幼虫期間中の日長や温度を夏から秋への季節変化と同様に変化させて蛹化に与える影響を調べた。その結果、一定の長日および短日ともに、日長だけでは蛹化に影響を与えず、日長にかかわらず低温で蛹化率が低下した。また、夏から秋を模した日長の変化だけも蛹化が抑制されることはなく、低温で蛹化率が低下した。これらのことから、日長より低温の方が蛹化抑制に大きく関与していることがわかった。 また、スギカミキリは遺伝的、形態的に、日本海型、太平洋型、混合型が存在する。そこで、蛹化抑制に関係する低温感受性の地域個体群間の差異を調べた。遺伝的に異なる福井県(日本海型)、茨城県(太平洋型)、岩手県(混合型)の孵化幼虫をスギ輪切り丸太に接種し、5月下旬から12月上旬まで寒冷(標高1400m)から温暖(標高30m)の野外条件下で飼育した後、12月に丸太を割材して蛹化率を調べた。その結果、いずれの地域個体群においても、蛹化率は寒冷地では低く、温暖地では高くなり、低温感受性の地域個体群間の差はないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スギカミキリ1世代の年数を決定する蛹化調節において、日長よりも温度の影響が大きいことを確認できた。また、温度による蛹化調節は、スギカミキリの遺伝的に異なる地域個体群間で差が無いことも明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
スギカミキリは1年1化の場合成虫で越冬し、2年1化の場合蛹化を避けて幼虫で越冬する。このため、蛹での越冬を避ける理由を、成虫、蛹、幼虫の低温耐性を解明することで考察する。
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Causes of Carryover |
これまでに遺伝的なタイプが知られていない地域において、供試虫採集のための出張および資材の送付を計画していたが、協力者の都合等により当該年度内に実行できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝的な違いが知られている地域個体群3タイプ以外の個体群においても、供試虫を採集して遺伝子を解析するとともに、生活史調節機構を比較することに用いる。
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