2015 Fiscal Year Research-status Report
竜巻強度を樹木被害から簡便に推定する手法に関する研究
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26450219
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
鈴木 覚 国立研究開発法人 森林総合研究所, 気象環境研究領域, 室長 (50353735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 潮 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, グループ長 (10353674)
服部 康男 一般財団法人電力中央研究所, 流体科学領域, 主任研究員 (60371473)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | EFスケール / 竜巻 / 突風 / ラージエディシミュレーション / 日本版改良藤田スケール / 幹折れ / 根返り / 枝折れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は竜巻等突風の強さを樹木の被害状況と対応付け、樹木の被害から竜巻等の突風の強さを推定可能な簡便な表を作成するのが目的である。竜巻等の突風によって樹木の被害は幹折れ、根返り、枝折れなどの被害形態で発生する。一方で、樹木は森林域は無論のこと、街路樹、公園、庭木など様々な植栽環境に分布し、それぞれ樹木の樹形や樹種が異なる。そこで、公園樹、街路樹、庭木の毎木調査を行うとともに、森林域においては過去の強風被害データを使って、被害形態ごとの被害発生風速を個々の樹木ごとに計算した。これら被害を発生させる風速のばらつきが大きかったため、針葉樹、広葉樹の2つのカテゴリーに分けた後に、統計的な処理を加えることによって代表風速、下限値、上限値を設定した。すなわち、被害を発生させる風速の頻度は対数正規分布を示したため、対数変換を行った上で、平均値を代表値、±σを上限値、下限値とした。これらの被害を発生させる風速を表形式にとりまとめた。本表は気象庁による竜巻等突風の強さを推定する日本版改良藤田スケールの策定に活用され、スケールにおける被害指標として「針葉樹」「広葉樹」が採用された。策定されたスケールは平成28年度から気象庁によって運用が始まる予定である。なお、代表値、上限値、下限値を決定する際には、建造物や施設などの人工物における被害発生風速と相互に比較を行うことによって、現実の被害発生状況を考慮した。 日本版改良藤田スケールにおいて樹木以外は人工物が被害指標とされており、樹木は田園地帯や森林などの人工物が少ない場所の数少ない被害指標として重要である。また、樹木は世界中に分布するので、世界各国に共通した汎用の被害指標として活用できる可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
竜巻等突風の強さの評定に利用可能な樹木被害と風速との対応関係を見出し、それを簡便な表形式で示すことが本課題の目的である。今年度は毎木調査によるデータの蓄積を行い、それを元に被害発生風速の代表値を決定し、樹木被害と被害発生風速の対応関係を表形式でまとめた。これが気象庁における日本版改良藤田スケールの策定において採用される運びとなった。今年度で表の作成ができ、気象庁によって採用されたことから進捗状況は計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
目標としていた表の作成には到達したが、これは定常状態を仮定した風速であり、現実に樹木に作用した風速とは異なる。そこで、竜巻様の気流を樹木に作用させ、現実に作用していると思われる風速と作用モーメントを見積もる。作成した風速と被害との対応関係が現実の被害発生状態から客観的に評価できると考えられる。
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Causes of Carryover |
茨城県東海村において樹木に作用する風力測定を開始したが、観測システムの電力消費量が予想外に大きく、バッテリーとソーラーパネルによる電力供給が不足して観測がたびたび中断している。強風時のデータを記録するため、連続データが必要であり、観測が中断しないようにシステム改変が必要になっている。そのため予定していた機材を電力消費の少ないものへと再検討しているところであり旅費と物品費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
連続データを得られるように、電力消費量の少ない機材を購入する。
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