2015 Fiscal Year Research-status Report
子どもの育ち、子育てを支援する学校・施設の木質化とその評価
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26450225
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅田 茂裕 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40272273)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 はる奈 埼玉大学, 教育学部, 教授 (70272739)
尾崎 啓子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80375592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 木材利用 / 行動分析 / 木質化 / 幼児 / 遊び行動 / 木質環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、子どもの育ち環境における木材利用の効果について、実験、調査を行い、以下の通り検討を進めた。 1)木質環境が子どもの育ちに及ぼす影響を明らかにするために、実験室環境に木質床と非木質床を設置し、0-1歳児の幼児の行動をコーディング法を用いて分析した。その結果、幼児の遊び行動、姿勢の変化において、無垢材の床の場合が多動性が小さいことが明らかとなった。また、保育士との関わりについて、幼児と保育士との位置関係をもとに分析した結果、自立的な行動(依存性)が多いことが明らかとなった。 2)同様に、4歳児の幼児の行動について、データを詳細に分析した結果、木材床では多動性が小さく、遊びに対するじっくり度も高いことが明らかになった。また、4歳児の場合、遊び行動における性差が確認され、男児の場合、無垢材の床では運動遊びなどが促され、女児の場合には、落ち着いた遊びが長く続く傾向が見られた。さらに、遊びの社会性発達の視点から幼児間の遊び行動を分析した結果、非木質床では孤立的遊びや並行的遊びが多く発現したのに対し、無垢材の床では連合的遊びや協同的遊びが多く発現するなど、幼児間の関係においても室内空間の材料が影響をおよぼすことが明らかとなった。 3)幼児教育、学校教育における木材利用の効果について、埼玉、東京エリアの保育園に勤務する保育士約200名に質問紙調査を行った。その結果、木材を積極的に利用した保育園に勤務する保育士は、その園舎を高く評価し満足感が高いものの、木材利用が進んでいない保育園では、保育士の不満感が高いことが明らかとなった。また、保育士が保育園舎に期待するイメージについて、「安全」「安心」「明るい」などの語が見いだされ、そうした基本的な機能が満たされないことによって、保育士の不満感に結び付くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室における実験は十分に進み、ほぼ完了している。結果の分析も滞りなく行われている。すでに学会発表も行い、その結果についての評価も高い。学校等における実際の児童・生徒の分析、検証が今後必要となるが、それも着実に進んでおり、計画通りである。また、教員、保育士等のインタビューや質問紙調査などを引き続き実施し、成果の充実につとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実験室をベースの実験研究を進めてきたが、それらの成果をもとにして、実際の学校、幼稚園等の施設における木質環境における子どもの育ち、学びについての検証を進める。最終年度でもあるので、データの速やかな収集と分析に努める。また、教員、保育士等のインタビューや質問紙調査などを実施し、成果のカバレッジの厚みを補強する。 研究計画以上に研究が進んでいることから、現在の研究を検討を進め、成果のアプリケーションに向けた研究の基礎につなげられるよう、引き続き努力していく予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた調査旅費が、実験等を中心とした研究遂行となったことや、代表者の健康の理由など諸事情により使用されなかった。また、分析ソフトウエアの更新を予定していたが、研究遂行が順調であったため、更新の時期をまたず分析を終えることができた。実験に使用する物品の費用が若干の計画修正によって減少したことや、共同研究者の支出がなく、そのことによっても残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年ど実施しなかった分析ソフトウエアの更新が予定されており、これを中心に予算を執行する。また、調査旅行を計画しており、適切な利用をすすめる。また、健康にも留意したい。
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Research Products
(6 results)