2015 Fiscal Year Research-status Report
多孔質材料としての木材の経年変化ーレオロジー解釈のための基礎検討
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26450230
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
虻川 操 (横山操) 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (20437271)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒノキ / 古材 / 経年変化 / 水分吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
"多孔質材料としての木材の経年変化ーレオロジー解釈のための基礎検討"では、1)木材は吸湿性材料であること、2)木材は多孔質材料であることの2点に注目して、経年による物性変化の記述に努めている。当該年度は、1)に関連して、経年による木材の水分吸着特性の変化について材料学会誌に、また2)に関連して、経年による木材細胞壁の化学変化および形態変化について、マテリアルライフ学会の報文として纏めた(2015年度マテリアル学会学会論文賞受賞)。1)では、現生材および年代の異なる古材について水分吸着等温線を測定し、hailwood Horrobinの解析を行った。その結果、現生材と古材では、相対湿度40%から60%近傍では、平衡含水率はやや古材の方が低くなるものの、その差は大きくないこと、一方で、80%以上の高い相対湿度においては、古材の方が相対湿度が高くなる現象を明らかにした。このことは、経年によって古材における空隙率が高くなっていることを示唆している。また、40%以下の低い相対湿度においては、古材の方が相対湿度が低くなることから、経年によって、疎水性が高くなることを示した。2)では、経年による木材の細胞壁の形質変化を、強度変化の機構と合わせて矛盾なく説明できる細胞壁モデルを提示した。これらの研究遂行の過程で、実際の古材に関する情報収集を行った。例えば、平等院鳳凰堂の建立当初材についての調査結果を取りまとめ、平等院紀要に報告を行うほか、国立歴史民俗博物館所蔵の木製和楽器における木材・漆塗膜の調査や、非木材繊維についても京都大学総合博物館館蔵の考古資料を対象とする劣化度調査を行い、学会等で成果報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度までに得られた実験結果をとりまとめ、学会発表ならびに学術雑誌への論文として報告した。 物性試験は予定通りに進められていないものの、成分分析や多糖類の直接解析など、あらたな手掛かりを得ているため、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
強度物性、および、水分吸着特性に関する基礎データが得られたほか、当分析などの新たな手法・視点に基づく新規データも取得できたので、これらの数値データをもとに解析し、今後は、劣化モデルの構築に着手したいと考えている。 また、研究着手の当初は、資料入手の困難さを鑑みて、主な研究対象としていなかった、博物館館蔵資料についても、劣化診断を評価項目とした調査機会を複数得ることができたため、次年度以降、より幅広い資料を視野に入れて、経年変化現象に関する定式化に努めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
購入予定であった木材資料が入手できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、研究計画を見直し、資料の購入も含めて検討する。
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Research Products
(11 results)