2015 Fiscal Year Research-status Report
アマモ場の造成と管理を目指したアマモの生理学的研究
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26450247
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
塩田 肇 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40315825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アマモ / 種子発芽 / 伸長成長 / 光環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
アマモの種子発芽と初期成長の生理メカニズムの解明を目的に、以下の①から④の解析を行った。 [①アマモ遺伝子の発現解析]当初からの200種類のアマモ遺伝子に加えて、植物ホルモンの生合成、応答、代謝に関与する22種類の遺伝子についても発現解析を行った。22種類の植物ホルモン関連遺伝子の解析から、アブシシン酸とジベレリンについて、生合成される時期、作用する時期、代謝・不活化される時期がほぼ決定された。陸生植物と同様に、アマモ種子の休眠と発芽にもこの2種類の植物ホルモンが関与するが、その調節の変遷が緩やかに進行することが示唆された。遺伝子発現解析はほぼ終了した。 [②アマモ遺伝子の機能解析]1種類のアマモ遺伝子について、遺伝子組換えシロイヌナズナ(組換えホモ個体)の環境ストレス耐性を解析した。この組換え体は高塩濃度でも成長が良好であり、この遺伝子が塩耐性に関与する可能性が示された。また、別の2遺伝子については、両者が共同して作用する可能性が高まったため、交配によって両遺伝子を保有する組換え体の作出を狙って、遺伝子組換え用ベクターの改変を行った。 [③種子発芽と初期成長における環境要因の解析]基本条件となる光の波長や強度の設定を完了した。アマモ幼植物体について、白色光、赤色光、青色光の効果を解析した。いずれの光条件でも、暗黒条件に比べて幼葉鞘の伸長が抑制され、第一葉の出現が促進された。この結果から、陸生植物と同様にアマモにも光に応答して成長を調節するメカニズムと赤色光と青色光の受容体が存在することが示唆された。 [④アマモ場造成での生育管理技術の開発]①②③から得られる成果をアマモ場造成に応用するため、実際のアマモ場造成での問題点を調査した。特に都市部に近い海域では、泥やヘドロの底質、低透明度による光合成の抑制、夏期の水温上昇、河川水の流入による低塩分などが主要な問題点であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子組換え実験を進めていた2遺伝子について、両者が共同して作用する可能性が高まったため、交配により両遺伝子を保有する遺伝子組換えシロイヌナズナの作出を計画している。そのため、遺伝子組換え用ベクターの構築から実験をやり直している。この2遺伝子については、新しく遺伝子組換えシロイヌナズナの完成を待って、環境ストレス耐性などを解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
[①アマモ遺伝子の発現解析]平成27年度でほぼ終了したため、補足的な実験を設定する。 [②アマモ遺伝子の機能解析]前年度に引き続き、アマモ遺伝子を組換えたシロイヌナズナの解析を進める。組換え体の作出は終了させ、塩分、溶存酸素、温度、光などの環境条件に対する遺伝子組換え体の反応性の解析に重点を置く。これにより、各アマモ遺伝子の生理的役割を明らかにする。 [③種子発芽と初期成長における環境要因の解析]前年度に引き続き、種子発芽と初期成長での白色光、赤色光、青色光、遠赤外光への応答性を解析する。特に、赤色光と遠赤外光の相互作用、異なる時期(年)のサンプルについての解析を行う。また、海水中の光の波長特性から、緑色光の効果についても解析を行う。 [④アマモ場造成での生育管理技術の開発]①から③の結果を活かし、アマモ場造成で種子発芽や初期成長をコントロールする実用的な方法の開発に取り組む。実用に近づけるよう、光の強度や波長特性、高水温、低塩濃度などを都市部の海域に近づけた生理実験を試みる。
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