2014 Fiscal Year Research-status Report
自然海域における藻類感染性海洋ウイルスモニタリング法の開発
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26450249
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
豊田 健介 慶應義塾大学, 商学部, 助教 (40585874)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋ウイルス / 珪藻 / Real-time qPCR / Real-time RT-qPCR / Diatom / Marine Virus / Phycology / Virology |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋には,これまでに確認されていない多様なウイルスが存在することが示唆され,それらは宿主生態や海洋環境の恒常性の因子として,重要な存在であることが予測される。しかし,宿主およびウイルスの自然海域における動態の調査法として,現在は限界希釈法が行われているが,本手法ではウイルス検出限界値も低い上,一度に大量のサンプルを測定することが困難である。そこで,予備実験により得られた赤潮の因子として知られるキリンドロテカ・クロステリウム(真核単細胞藻類珪藻)を宿主とする3タイプの新種ウイルスをモデルとし,より高感度で安定的な自然海域におけるモニタリング法の開発を目的に,本年度は次の3つ実験を主に行った。 1) 宿主リアルタイム定量PCR 2) 3新種のウイルスの性状解析 3) 各々のウイルスのリアルタイム定量RT-PCRの開発 宿主リアルタイム定量PCRについて,rDNA ITS1領域に特異性の高い領域を確認し,SyberGreen法による定量解析法を確立した。3種のウイルスの性状解析について,3k~11kbの+センスssRNAであることが確認された。それらの塩基配列の相同異性は50%以上であり,中でもRNA依存RNAポリメラーゼ発現配列を用いた系統解析では,他の珪藻感染性RNAウイルスと同系統であることが確認された。これらのデータを用いてリアルタイム定量qPCR法の開発においては,各々のウイルスについてTaqManProbe法ではなく,より安価なSyberGreen法による検出・定量法が確立された。本定量法は,検出および定量において高感度であり,さらにDNAおよびRNA抽出法,サンプルの濃縮,溶媒の調整等,プロトコールを精査することにより,より高感度な自然海水における宿主およびウイルスの生態調査法が確立されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づいた宿主およびウイルスの定量法の開発は概ね順調に行われた。 宿主リアルタイム定量PCRについて,rDNA ITS1領域に特異性の高い塩基配列を確認し,Syber Green法による検出定量法を確立した。本手法により,下限10 cells/mlの高感度により定量を行うことが可能となった。 3種のウイルスについては,KT12RNAV,FTRNAV,そして,KURNVと仮称を付け,各々についてゲノム全解析および検出定量法としてReal Time qPCR法の開発を行った。全てのウイルスは3k~11kbの+センス1本鎖RNAをゲノムとして所持することが確認された。また,解析された部分塩基配列より,特異性が得られる領域複数についてリアルタイム定量RT-PCR法を開発し,実験室系での安定的な検出定量法を確立した。3種ウイルスのゲノム塩基配列の相同性は各々50%以上であるが,3種を同時に検出定量可能な領域はなく,各々に特異的なプライマーを用いる必要性がある。 本年度の成果について,新規ウイルスについては性状解析のデータを基に,学術論文の執筆を行っている。また,開発された定量検出法について,研究期間全年度において行われる月に1度の定点採水(東京-神奈川-千葉沿岸)により得られた自然海水からの検出定量への適用を検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においても,研究計画通り実験を行う。自然海水からの宿主およびウイルスの検出定量に関して,前年度に開発されたリアルタイムqPCR法を自然海水への適用を目的に,自然海水の濃縮法,宿主およびウイルスのトラップ法,各試薬の濃度調整等を行い,より適した条件を検討する。対象実験として,従来行われてきた宿主細胞の血球計数盤による計数および限界希釈法によるウイルスの測定も引き続き行い,両データを合わせ,検証を行う。 新規研究課題として,モノクローナル抗体を用いたELISA法(競合法)による,より高感度で安定的な検出定量法の開発を行う。ウイルス溶藻液10Lを超高速遠心機によりペレット化し,得られた高濃度なカプシドタンパクを基に,複数サイトのモノクローナル抗体を作成する。これを用いて,適した条件を検討し,安定的に検出定量可能な手法の開発を行う。
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Causes of Carryover |
想定していた試薬および遺伝子解析について,企業による期間限定のキャンペーン価格により,計画よりも安価で購入・依頼を行うことが可能であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画における開発では,様々な設定の条件により検出定量法の検証を行う必要がある。前年度の繰り越し金については,この条件設定を想定よりも多く行うことに使用し,より正確な安定した手法を開発するのに用いる予定である。
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