2014 Fiscal Year Research-status Report
係留ADCPアーカイブデータを用いた10年規模動物プランクトン変動の復元
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26450250
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
喜多村 稔 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術研究員 (00392952)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / ADCP / 音響散乱 / 外洋 / バイオマス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な時間スケールの環境変動に対する動物プランクトンの応答を明らかにするために、音響式流向流速計(ADCP)アーカイブデータから動物プランクトンの時系列変動を復元する。研究対象海域として、西部北太平洋亜熱帯域、北極海、西部太平洋熱帯域を設定する。 平成26年度は、西部北太平洋亜熱帯の時系列観測点S1(30°N, 145°E)において2010年2月から2013年7月まで測定された(2010年6月~10月は欠測)ADCPデータを用いて解析を行った。75kHzのADCPデータから算出された音響散乱強度は、プランクトンネットを用いて得られた300m以浅のバルク動物プランクトンバイオマスと良い相関があった。一方で、300m以深においては昼夜を通して高い音響散乱があり、音響と動物プランクトンバイオマスの間に良い関係は認められない。ネットサンプルの観察から、300m以深にはオニハダカ属魚類が卓越していたが、本属の多くは浮き袋を有する。これらの結果から、得られた音響散乱は、300m以浅では動物プランクトンバイオマスを反映し、300m以深では動物プランクトンと中層魚類に由来すると考えられた。音響散乱の時系列変動からは、当海域においては周年にわたって動物プランクトンの日周鉛直移動が認められ、表層滞在時間は日出没タイミングに同調して季節変動すること、満月時は新月時に比べて夜間の分布深度層が深くなること等を明らかにした。また、中規模渦の通過に伴い、動物プランクトンの鉛直分布様式も変化した。これらの結果を論文草稿にとりまとめ、平成27年4月にJournal of Geophysical Research: Oceansに投稿した。 北極海のADCPデータを用いて、少氷年と多氷年では動物プランクトンバイオマスが異なることを明らかにし、2015年3月に行われた日本海洋学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる平成26年度は、比較的短期間(3年)のデータセットを用いて、動物プランクトンのバイオマス季節変動や短期的物理イベントに対する応答を明らかにすること、音響を用いた動物プランクトンバイオマスの復元研究を実際に進めて問題点を抽出することを目的としていた。前者に関しては、順調に進展し、年度明け直後の平成27年4月に論文投稿することができた。後者としては、ADCPデータから見積もられた音響散乱強度は、海域・深度によっては動物プランクトンバイオマスを直接反映せず浮き袋を持つ魚類の影響が強く現れる場合があることを明らかにし、他海域においてデータ解析を進める際に留意すべき事項として認識された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は以下を行う。 1)西部亜熱帯海域の研究結果をまとめた投稿論文の受理を目指す 2)北極海における最近10年間の環境変動(主として海氷環境の変化)と動物プランクトンバイオマスの関連を明らかにし、論文草稿の作成 3)西部太平洋熱帯域におけるADCPデータをとりまとめて予備解析を行う
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