2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of zooplankton dynamics by using archived ADCP data
Project/Area Number |
26450250
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
喜多村 稔 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 技術研究員 (00392952)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 動物プランクトン / 現存量変動 / 音響計測 / ADCP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、北極海における動物プランクトン群集は、2000年代初頭から2010年代初頭にかけて現存量が1.6倍増加していることを明らかにした。現存量増加の要因として、夏季の水温上昇による成長速度の上昇、開氷期間が長くなったことに伴う基礎生産力の増大(餌環境の好転)、餌環境の好転により動物プランクトン体内の油球蓄積量が増大して越冬成功率を上昇させた可能性などが考えられる。この動物プランクトン現存量の増加が海洋生態系に与えるインパクトを評価するために、群集の摂餌圧変化を見積もったところ、水温上昇と個体数増加の影響により摂餌圧も増加していた。さらに、衛星観測により見積もられる基礎生産速度から摂餌速度を引いた値を沈降フラックスと仮定すると、開氷期の総沈降フラックスは2000年代初頭から2010年代初頭にかけて減少していた。この結果は、温暖化による動物プランクトン群集の変化が海洋の物質循環に影響を与えていることを示唆している。本結果について論文執筆を行い投稿した。 本研究による亜熱帯域データの解析では、中層性の有標魚類に由来する音響散乱が動物プランクトンによる音響散乱を覆い隠してしまう可能性が示唆された。係留ADCPデータから動物プランクトンの現存量変動を復元するためには、ノイズ的な効果を与えてしまう魚類群集の知見が必要である。そこで亜寒帯の係留ADCP観測点・K2における魚類群集について、種組成・鉛直分布・日周鉛直移動などの情報を採取した。春夏秋冬の全季節から得られた魚類標本を精査し、計27種を同定するとともに鉛直分布と日周鉛直移動の有無を明らかにした。亜熱帯海域の中層において高い音響散乱層を形成すると判断された有標魚類・オニハダカ類は、測点K2においては個体数密度が低いと示唆された。これらの結果については、現在論文執筆中である。
|