2015 Fiscal Year Research-status Report
栄養カスケードと温暖化に抵抗力をもつ藻場の形成に関する研究
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26450251
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
川俣 茂 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, グループ長 (50372066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 洋平 高知大学, その他の研究科, 准教授 (60530483)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 栄養カスケード / 磯焼け / ウニ / イセエビ / 藻場 / 乱獲 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウニが優占する磯焼け場が国内外の沿岸で拡大している。その原因として、海外ではウニの捕食者の乱獲がウニの大量発生を招き、その結果海藻の過剰摂食を起こすという栄養カスケード仮説が全面禁漁区での研究により検証され、広く受け入れつつあるが、我が国では温暖化の影響のみが指摘され、栄養カスケードについては検討事例がない。本研究では温暖化が進み、ウニの磯焼け状態が蔓延化した高知県沿岸で、特異的に大規模な藻場が維持されている禁漁区とその周辺域を対象としてイセエビを主要なウニの捕食者に想定した栄養カスケード仮説を検証するため、今年度はイセエビがどのくらいのサイズのウニまで捕食するかを、対象海域に優占的に出現するウニ(ツマジロナガウニとムラサキウニ)を用いて実験水槽で調べた。その結果、イセエビ最小個体群(頭胸甲長CL<52mm)による捕食はツマジロナガウニでは最大個体群(殻径TD>40mm)に及んだのに対してムラサキウニでは概ねTD<35mmの小型個体に留まり、また前者のウニは後者よりも捕食されやすいことが明らかになった。巣穴に隠れているイセエビのCLをステレオカメラを用いて捕獲せずに推定する手法を確立し、禁漁区内でイセエビの隠れ場となっているサンゴ群集域と投石礁にイセエビが>3個体/25m2以上の密度で生息し、その大半がCL>65mmの大型個体であることを明らかにした。またそれらの隠れ場からの距離別のウニの密度とサイズ組成を調べ、(1)隠れ場からの距離が近いほどウニ密度が減少し、特に10~20mで少なくなること、(2)ナガウニ類では隠れ場から離れた場所では小型個体も出現するが、近くでは大型個体のみになること、(3)ムラサキウニでは隠れ場の近くでも小型個体が出現することを明らかにし、イセエビの捕食圧が隠れ場に近いほど高くなるが、移動量と被食のされ難さがウニの種によって異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に計画した水槽実験と野外調査を実施し、期待された成果が得られたことと、前年度実施した研究成果の一部を論文にまとめ、発表することができたことから。
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Strategy for Future Research Activity |
禁漁区内のイセエビの隠れ場周辺でウニの密度がイセエビの捕食により減少していることを支持するいくつか証拠が得られつつあるが、ウニがイセエビに捕食されていることを示す確証はまだ得られていない。今年度はウニの捕食者を特定するための、インターバルカメラを用いた映像記録調査を実施するとともに、補足的調査を実施し、研究のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
26年度実施のウニの係留実験により、ウニの捕食による死亡が、イセエビの生息していない近隣漁業区のサンゴ群集域でも確認され、その死亡率は予想に反して禁漁区内より1/5程度に減少するものの、無視できない水準であった。このため、27年度の調査では、ウニの魚類による捕食の可能性も考えて、禁漁区と漁業区のサンゴ群集域での魚類相を、海藻繁茂期のほかに係留実験を予定していた海藻衰退期に調査することを計画した。しかし、係留実験は、研究協力者の異動に伴い、十分な協力が得られない状況の中で、係留用ウニを適切な状態で必要数、準備することができず、やむなく海藻衰退期の魚類調査とともに中止し、このため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海藻繁茂期に実施した魚類調査により、ウニの捕食の可能性のある魚類としてブダイやベラ類が観察されたが、いずれもサイズ的にウニの捕食者にはなり難いと考えられ、同様の魚類調査を継続実施してもウニの捕食者を特定できる見込みは低いと考えられる。そこで、28年度は調査方法を変更して、ウニの捕食者を確実に調べられる方法として、係留ウニのインターバル撮影を実施する。繰り越し額は、そのインターバル撮影調査と画像解析の経費に当てる。
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Research Products
(5 results)