2015 Fiscal Year Research-status Report
水産資源管理への協力行動の進展に及ぼす漁業者の心理的要因に関する研究
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26450257
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山川 卓 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10345184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水産資源 / 資源管理 / 心理的要因 / 協力行動 / コミュニティ / 利己心 / 漁業 / 共分散構造分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
水産資源管理への協力行動の進展に及ぼす漁業者の心理的要因を特定することを目的として,コミュニティ主体の資源管理を行っている地区の漁業協同組合について,組合員の漁業者を対象とするアンケート調査を行った。本年度は主に,昨年度のデータへの追加を行い,データ件数の増加を図った。アンケートは,5件法による評定尺度法を用いた質問票形式とし,漁業者からの回答の得やすさと解析を行う際の検出力のバランスを考慮した28の質問項目により構成した。質問項目は主に,「資源量に関する質問」「個人の道徳・規範意識に関する質問」「地域(漁協)内での結びつきに関する質問」「外部からの批判・圧力に関する質問」「地域ベースの資源管理への協力に対する態度を問う質問」よりなる。主因子法による因子分析を行ったところ,昨年度と同様に4因子構造が妥当であると考えられた。因子を構成する質問項目の内容から,第1~第4因子をそれぞれ,「資源管理への協力意識」因子,「地元への帰属意識」因子,「利己心」因子,「外部からの圧力への意識」因子と命名した。この4因子を潜在変数とし,第2~第4因子それぞれによって第1因子が説明されると仮定して,共分散構造分析によるパス解析を行ったところ,資源管理への協力意識は「地元への帰属意識」と「外部からの圧力への意識」によって促進され,「利己心」によって低下することがおおよそ示唆され,昨年度の結果が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の成果をもとに年度当初に立てた計画に従って研究を実施することができた。因子分析,共分散構造分析による解析結果も昨年度の結果をほぼ裏付けるものとなり,仮説の妥当性が高いものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果では,漁業地区や漁業種類ごとの資源管理意識の違いを検出するまでには至っていないので,より多くの地区,漁業種類の漁業者を対象に,詳細な吟味を行う。さらに,ゲーム理論による既往の実験的手法を応用し,アンケートへの回答者がどの程度の基本的な協力性向を有しているかを特定して解析することで,資源管理意識に関する構造の違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
データの解析作業において学生アルバイトを依頼せずに作業することができたため,人件費・謝金を節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であり,研究結果のとりまとめに向けた解析作業に相当の労力が必要となる。このため,データの解析作業の学生アルバイトの支出が必要となる。また,調査地区数を増やすため,相当額の旅費が必要である。
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