2014 Fiscal Year Research-status Report
イカ類のグループ・ダイナミックスに関する行動学的研究
Project/Area Number |
26450266
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イカ類 / グループ・ダイナミックス / 社会 / 行動 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
イカ類は相対サイズが高等脊椎動物に比肩し得る巨大脳とヒトに酷似した精巧なレンズ眼を有し、高次脳機能を示す。本研究は、イカ類に見られる高次脳機能が社会性に関連して発達したとの発想のもと、同種個体より構成されるイカ類の複雑な群れの社会的機能について、多くの個体が集まることで表出される集団による特異な動態、すなわち「グループ・ダイナミックス」を、多くの個体の思考が集まることで最適な解が導き出される「集合知」の考えにも着目しつつ、他者認知など集団を構成する個々体の様々な認知能力や性格の違いといった個体変異も加味して読み解くことを目的とする。 平成26年度は研究項目「グループ・ダイナミックスの実態と機構」について、アオリイカを対象とした次のような研究を実施した。初めに、室内で卵から育成した亜成体のアオリイカの群れを、新規環境である大型水槽に放流し、群れ全体の動態を観察し時系列に沿って解析した。その結果、最初にアオリイカはそれぞれが異なる方向を向いているが、やがて近接して横並びの明瞭な群れ隊形をつくる。そして、群れ内の特定の1個体が集団よりやや抜きん出て、それに集団全体が同調するようにして同方向へと向かうことで、群れ全体が行動範囲を広げることなど、群れに特有の力学が働く様子を明らかにした。次に、特定の1個体のアオリイカに快刺激(餌生物)または不快刺激(捕食者)を提示し、この様子を群れの個体に視認させ、反応を調べた。その結果、快刺激および不快刺激に対して特定1個体がそれぞれ退避行動および接近行動をとると、これを見た群れ全体も同じく退避行動および接近行動を示すこと。さらに、特定の1個体がハブ個体であった場合、群れの中のより多くの個体が同調した行動を示すことなど、本種の集団意思決定に特定個体の動きが関わり、その個体の属性も群れを動かす要因となっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿ってアオリイカの長期的な集団飼育を行い、これに基づいて各種の行動実験を実施することができた。それぞれの実験および観察は順調に進めることができ、特に大きな計画変更を行う必要は生じなかった。また、このことにより、研究目的であるイカ類のグループ・ダイナミックスについて重要な知見を得ることができた。これらは平成27年度以降の研究遂行の基盤となり得るもので、平成26年度の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画に沿って研究項目を実施する。すなわち、平成26年度に知見を得たアオリイカのグループ・ダイナミックスについて、その発達過程を実験的に詳細に追跡する。さらに、他種イカ類についてもグループ・ダイナミックの実態を調べ、アオリイカと比較することでイカ類における集団行動の進化的側面について解明することを試みる。
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Causes of Carryover |
本実験で長期飼育したアオリイカの生残が良く、餌料費にわずかな余裕が生まれたため。次年度もアオリイカの長期飼育を実施予定のため、当該の余剰分を次年度に繰り越して有効利用する方が良いと判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じたわずかな余剰分は長期飼育予定のアオリイカの育成費として活用する。平成27年度に請求した助成金については、当初の計画に沿って使用する。
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