2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450268
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邊 俊 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (60401296)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内部潮汐 / 卵 / プレレプトセファルス / なつしま航海 / 塩分フロント / UNA-CAM / ポップアップタグ / 日周鉛直移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 過去のデータに基づく時空間的特性の検証 3航海(KH-09-2, KH-11-6, KH-12-2)で得られたニホンウナギの卵の採集日・地点・鉛直分布、および人工催熟における卵の発育過程の結果から、本種の主要産卵日は新月3日前と推定した。新月3日前(主要産卵日)における内部潮汐の数値シミュレーション(Niwa & Hibiya 2014)の結果から、卵とプレレプトセファルスが採集された地点付近では内部潮汐エネルギーの強くなっていることが確認された。 2. なつしま航海(NT14-09:2014年5月14日~6月4日) (1) 塩分フロントと海嶺が交叉する点の第3象限に約7マイル間隔の測点を設け、新月(5月29日3時40分)前の6日間(5月23~28日)、漂留系・係留系水中カメラシステム(UNA-CAM・江戸っ子)によりニホンウナギの産卵行動の観察、および計量魚群探知機による親ウナギの産卵集団の探索を試みた。しかし、産卵行動の観察および集団の探索に成功することができなかった。5月26~28日、同海域においてORIネットによりニホンウナギの卵3個と4月生まれのレプトセファルス8個体(体長10.6-13.9mm)を採集することができた。 (2) 三河湾で採集された天然の銀ウナギ3個体(体長792-992mm)にポップアップタグを装着し、2014年5月19日と30日に西マリアナ海嶺南端部の3地点で放流した。その結果、3個体中1個体についてのみ正常な行動データを得ることができた。データ解析から、ニホンウナギは産卵場でも日周鉛直移動を行っており、その遊泳水深の上限と下限には光と水温が制限要因になっていることが明らかとなった。 (3) 西マリアナ海嶺の西側の広範囲でプレレプトセファルスの採集を行った結果、産卵行動の観察および集団探索を行った海域のみならず、西マリアナ海嶺の最南端部の海域においてもプレレプトセファルス243個体の採集に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去のデータより、ニホンウナギの産卵日(新月3日前)を推定することができた。また、内部潮汐の強い地点は、いずれも卵とプレレプトセファルスが採集された地点の上流に位置しており、これらの地点がそれぞれの新月期で産卵に用いられたものと推定した。これらの結果は、ニホンウナギの産卵の時空間的特性に迫るものと考えた。 産卵場においても規則正しい日周鉛直移動が見られ、またその制限要因の解明により、ニホンウナギの産卵回遊生態の一端が明らかとなった。得られた知見はウナギの完全養殖技術の確立に貢献すると考える。 なつしま航海(NT14-09)にて、産卵行動の観察および産卵集団の発見はできなかったものの、同じ海域においてニホンウナギの卵とプレレプトセファルスを採集できたことは、本種の産卵地点を的確に予測している証拠と考える。また、4月生まれのレプトセファルスが採集されたことは、この場所が4月と5月の2回にわたり産卵地点として利用されたと推定した。さらに、西マリアナ海嶺の最南端部において数多くのプレレプトセファルスの採集に成功した事実は、この海域も5月の産卵地点に用いられたことを示し、5月には2つの産卵地点が形成されたと推定した。西マリアナ海嶺の最南端部が産卵地点と用いられること、また、同時期に複数の産卵地点が形成されることはニホンウナギの産卵回遊生態に関して新しい知見となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、産卵行動を観察して産卵生態を完全解明するには、さらに精度良く産卵地点を予測できる手法の開発が必要である。そこで、卵と内部潮汐エネルギーの分布との対応関係(内部潮汐仮説)について、2015年度のなつしま航海(NT15-09:2015年5月5日~22日)においてこの仮説の検証を行う予定である。また本航海では、CTDおよびUNA-CAMに水中光量子計を取り付け、野外の水中照度の変化を調べる。そのデータを既に得られている産卵場でのニホンウナギの日周鉛直移動と比較することにより、制限要因の一つが光であることを明確にしたい。さらには、産卵場でのニホンウナギの行動が解明できたので、採水によりニホンウナギの環境DNAを検出し、産卵地点を特定したいと考えている。 ポップアップタグを用いて、親ウナギの沿岸域および外洋域での回遊行動および経路の推定も行う予定である。
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Research Products
(14 results)