2015 Fiscal Year Research-status Report
蛍光計測による環境ストレスを受けた海苔の劣化初期段階の診断技術の開発
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26450272
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
岡本 保 木更津工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80233378)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スサビノリ / 蛍光計測 / 蛍光スペクトル / レーザー誘起蛍光法 / 励起蛍光マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はスサビノリの劣化初期段階の診断に有効と考えられる励起蛍光マトリックス(EEM: Excitation Emission Matrix)測定を行った。淡水の影響、あかぐされ病の影響を検討したところ、正常なスサビノリでは励起波長450 nm以上で蛍光波長650 nm、720 nm付近に強いピークが見られるが、スサビノリを淡水に浸したとき、およびあかぐされ病のものでは、蛍光波長580 nm付近に強いピークが観測された。また、強度比F580/F685が励起波長430 nmで極小をとることがわかった。これは、クロロフィルaの吸収ピークと一致する。クロロフィルaによる吸収と関係して、クロロフィルaによる波長685 nmの蛍光強度が大きくなるため、強度比は最小となると考えられる。また、淡水に浸したもの、あかぐされ病のものは、全体的に生海苔よりも強度比が大きいという特徴が見られた。これは、ストレス下にあるスサビノリでは、波長580 nmの発光起源であるフィコエリスリンによるエネルギー移動が阻害されているためだと考えられる。 さらに、蛍光スペクトルの温度特性を検討した。液体窒素温度に近づくにつれてクロロフィルaに起因する720 nm のピーク強度は非常に強くなった。詳細に検討すると、温度が下がるについて強度比F580/F720が一度低下したのち-40℃程度で上昇し、その後再び急激に減少した。これはまず-40℃程度でフィコエリスリンからクロロフィルへのエネルギー移動も妨げられはじめてフィコエリスリンの蛍光強度が増加し、さらに低温にすると光合成が妨げられるためにクロロフィル蛍光の強度が増加したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光計測によるスサビノリの劣化初期段階の診断を検討しており、これまでに蛍光寿命および励起蛍光マトリックスの測定により目視では測定困難な劣化初期段階での診断が可能ではないかとの見通しを得ている。このため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スサビノリの劣化初期段階の診断方法として蛍光スペクトル計測に加えて、蛍光寿命測定、励起蛍光マトリックス測定が有効であると考えられる。これらの計測技術を確立するために、メカニズムの解明などが今後の課題である。特に励起蛍光マトリックスは多くの情報を含んでいるが、まだ定性的な解釈のみが行えている段階であり、定量的に解析をする手法を確立することが重要であると考えている。 これ以外に蛍光分布の計測なども有効であると考えられる。蛍光分布測定技術を確立することも今後の課題である。
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Causes of Carryover |
ラマン散乱分光など新しい光学的な計測を行う必要が生じ、次年度以降に他の研究機関における研究打ち合わせ等で旅費が必要なため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究打ち合わせ旅費に使用。
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