2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26450278
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 浩司 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (40250500)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒスタミン / ヒスタミン生成菌 / バクテリオファージ / 微生物制御 / ヒスタミン食中毒 / ファージセラピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,強いヒスタミン生成能を持つ Morganella morganiiに感染する新たなバクテリオファージの2株(ΦMV-1およびΦMV-4)の分離に成功し,これらを精製して性状を調べた。 透過型電子顕微鏡観察の結果から,ΦMV-1は,平均96.1nmの頭部と304.0nmの非伸縮性尾部を持つ Siphoviridae科ファージであり,ΦMV-4は,平均121.2nmの頭部と114.4nmの伸縮性尾部を持つ Myoviridae科ファージであることが明らかとなった。ΦMV-1およびΦMV-4はいずれも50℃の加熱に耐性を持ち,また,低温(4℃),pH5.0-9.0または1M NaClにも耐性であったことから,食品微生物制御に利用可能と考えられた。ファージの増殖特性を示す潜伏期,上昇期およびバーストサイズは,ΦMV-1およびΦMV-4で各々,30分間-30分間-68PFU/infected cellおよび60分間-30分間-36PFU/infected cellと評価された。次に,ΦMV-1に対する M.morganiiの耐性株を作出し,両ファージの感染作用様式を検討したところ,作出した M.morganii ΦMV-1耐性株に対するΦMV-1の吸着率は60%から10%に低下していたが,ΦMV-4の吸着率は親株と変わらなかったことから,ΦMV-1とΦMV-4はM.morganiiの細胞表面の異なるレセプター部位に作用するファージと示唆された。ΦMV-1とΦMV-4の M.morganii発育抑制能を in vitro系で評価したところ,ΦMV-4単独処理では24時間目,ΦMV-1単独処理では48時間目から M.morganiiの発育が見られたが,ΦMV-1およびΦMV-4の併用処理では72時間目まで M.morganiiの発育を抑制することができることが明らかになった。よって,複数のファージの併用によって効果的に微生物の発育制御が可能となることを示した。 さらに,昨年度分離した M.morganii感染性ファージFSP1および Photobacterium damselae感染性ファージPhda1のゲノム配列163,793bpおよび48,074bpを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究内容のヒスタミン生成菌に感染する溶菌性ファージの探索において,昨年度に引き続き複数株の溶菌性ファージの分離に成功し,またこれらファージ株の同定および感染様式,感染特性,ヒスタミン生成菌抑制効果および食品での利用方法について基礎的な知見を概ね明らかにでき,また計画通り分離ファージのゲノム配列も決定した。したがって,本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,有用ファージの探索,感染特性の解明と行うとともに,実際の食品での分離ファージのヒスタミン生成菌の発育抑制能およびヒスタミン蓄積抑制効果について検討し,食品微生物制御におけるファージセラピーの有効性を評価する。
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Causes of Carryover |
発注試薬等の納品日の遅延(3月3日)によって代金の支払いが平成28年4月となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に,購入予定の試薬等は納品済みで,平成28年4月末に購入代金を支払う予定。
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