2014 Fiscal Year Research-status Report
魚類の細胞内LPSセンサーの探査およびその認識機構の解明
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26450288
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (70708130)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | LPS / パターン認識 / 魚類 / NOD様受容体(NLR) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究事業では、魚類における初めてのLPS認識センサーの発見を目的として、魚類細胞内における細胞内寄生性細菌のLPS認識センサー遺伝子の同定およびその認識機構を解明することを計画している。今年度は、まず細胞内でLPS認識センサーを構成している遺伝子であるインフラマソームを構成する遺伝子のクローン化を行った。インフラマソームを構成する遺伝子群は、センサー分子、ASCアダプター、プロ・カスパーゼ1遺伝子で構成されおり、それぞれのcDNAをトラフグよりクローン化した。しかし、セNOD様受容体(NLR)ファミリーで構成されているセンサー遺伝子は、どの遺伝子がLPS応答性か分からないため、まずNLRファミリー遺伝子の網羅的な探査を行い、16個のNLRファミリー遺伝子をトラフグゲノムデータベースより発見した。これらの遺伝子の内、LPS刺激に発現誘導され(23から55倍程度発現上昇)、且つ、インフラマソーム誘導因子であるナイジェリシンによって発現が強く誘導(25から37倍程度発現上昇)された2つの遺伝子を選択し、NLR-C10およびNLR-C12と名付けた。また、面白いことに分子系統解析の結果、魚類特有の遺伝子であることが分かった。今回クローン化したASCやプロ・カスパーゼ1遺伝子も同様に、LPS刺激した頭腎細胞において発現が上昇した。本実験で用いたナイジェリシンの作用として、魚類でも哺乳類と同様の炎症性サイトカインの活性化がおこるかを、サイトカイン遺伝子群の網羅的な発現と貪食活性等の生物活性を見ることで、哺乳類同様の現象が誘導されることを証明した。これにより魚類でもインフラマソームが存在していることが示唆された。また、今後のインフラマソーム機能実験の準備として、フグのインターロイキン(IL)-1β遺伝子を発現ベクターにクローン化を行った。また、同定したNLR-C10およびNLR-C12遺伝子も同様に発現ベクターにクローン化中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、(1)フグのインフラマソーム構成遺伝子のクローン化、(2)IL-1β遺伝子のクローン化、(3)フグのインフラマソーム発現ベクターン構築、の3つの目標をもうけて実験を進めた。 まず1つ目の(1)の実験については、インフラマソームを構成する遺伝子群であるASCおよびプロ・カスパーゼ1遺伝子の同定を行い、クローン化を行った。また、センサー遺伝子の候補として有力な2つの遺伝子であるNLR-C10およびNLR-C12遺伝子を同定した。今後これらの遺伝子の機能について詳細に解明していく予定である。 次に(2)の実験は、IL-1β遺伝子のクローン化を発現ベクターであるpcDNA4/His Maxにクローン化を完了した。 最後の(3)の実験については、ASCおよびプロ・カスパーゼ1遺伝子のクローン化は完了しているが、NLR-C10およびNLR-C12遺伝子については、発現ベクターにクローン化中でほぼ完了している。 これらの状況から平成26年度の研究達成度として、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究の推進方策としては以下の通りである。 (1) LPS認識に関与するセンサー遺伝子のIL-1βの活性化 同定したNLR-C10およびNLR-C12遺伝子を発現ベクターにクローン化し、魚類の培養細胞(HINAEあるいはEPC細胞等)を用いて、IL-1βを活性化させるかを確認するための一過性の実験系を行う。まず、IL-1βがカスペース1によって分解を受け、活性化型に変化しているかを確認するために、インフラマソーム遺伝子およびpFLAG-IL-1βを一緒に培養細胞へ形質導入(トランスフェクション)し、LPS刺激した後に、抗FLAGタグ抗体を用いてウェスタンブロット法により、過剰発現させたIL-1βが切断されたかを、分子量の違いを検出する。これによりインフラマソームによってLPS認識を介して、IL-1βの活性化が促されたかを確認する。 (2) LPS認識センサー遺伝子によるNF-κBの活性化 申請者のこれまでの研究成果から、フグの腎臓細胞ではLPSやナイジェリシンの刺激によって炎症性サイトカイン遺伝子の発現が強く誘導されることから、これらの誘導にインフラマソームが関与していると考えられる。さらにIL-1βの活性化に伴い、炎症性サイトカイン遺伝子の発現を制御しているNF-κBの活性も増強されると推測できる。そのため、インフラマソームによるLPS認識を介したNF-κB活性についてもレポターアッセイにより解析する。
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Research Products
(12 results)