2014 Fiscal Year Research-status Report
低分子RNA解析を基軸とした渦鞭毛藻の遺伝子発現調節機構に関する研究
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26450289
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小檜山 篤志 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (60337988)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 渦鞭毛藻 / 低分子RNA / 発現調節機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はまず初めに,Alexandrium tamarenseから我々が既に単離している34塩基の低分子RNA(sRNA)への結合成分の有無を調べた.A. tamarenseの粗抽出物をゲルろ過クロマトグラフィーに供して分画した後,RNAドットブロット解析を行なって当該sRNAの存在画分を調べた.その結果,本sRNAの推定分子量よりも大きい分子量と推測される画分でシグナルが得られたことから,生体内で本sRNAが何らかの成分と結合している可能性が推測された.そこで次に,本sRNAのセンスRNAおよびアンチセンスRNAを用い,A. tamarense粗抽出物を対象にアフィニティー精製を行ない,結合タンパク質成分に関してSDS-PAGEを用いて調べた.複数の条件下で精製を試みたものの,本sRNAへの結合タンパク質を認めるには至らなかった.したがって,さらなる条件検討が必要な可能性,結合成分がRNA等である可能性が考えられた. 次に,本sRNAの前駆体のクローニングを,RNAを対象としたPCR法を用いて試みた.しかしながら,前駆体RNAを単離するには至らなかった. さらに,SymbiodiniumおよびA. catenellaを用いたsRNAの単離を試みた.その結果,sRNAを単離することができたものの,SymbiodiniumからはA. tamarenseから単離した34塩基のsRNAと相同性を有するクローンを得ることができなかった.一方,A. catenellaからは相同性を有するクローンを得ることができた.本クローンは32塩基から成り,A. tamarenseのものとはいくつか塩基が異なるものであった.したがって,塩基の一致した部分が機能に重要な役割を果たす可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに,我々が既に単離しているsRNAにつき,前駆体の単離および結合成分の同定を試みた.複数のプライマーや鋳型を用い,様々の条件でPCRを行なったものの,前駆体を単離するには至らなかった.また,生体内に存在する際のsRNAへの結合成分の存在の有無を,ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて調べた結果,sRNAに何らかの成分が結合している可能性が推測された.さらに複数種の合成RNAを用いてsRNAに対する結合タンパク質のアフィニティー精製を試みたものの,当該sRNAへの結合タンパク質を単離・同定するには至らなかった.また,A. tamarense以外の渦鞭毛藻からsRNAを単離した結果,SymbiodiniumおよびA. catenellaよりsRNAを単離することに成功し,A. catenellaからはA. tamarenseの当該sRNAとやや異なる塩基配列を有するものの,相同性を有するクローンを得ることができた. 以上のように,複数の結果が得られたものの,今年度中に前駆体の単離や結合成分の同定を行なうことが最善であると考えていたことから,やや達成度が低いと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から,今後は当該sRNAへの結合成分の同定を重点的に行うこととする.平成26年度はタンパク質成分に着目して調べたが,今後はRNAと結合している可能性を考え,アフィニティー精製を行なった後,溶出された成分に含まれるRNAを用いてcDNAクローニングを試みる.また,複数の成分が単離される可能性が考えられることから,その場合には共通する塩基配列を調べることにより,当該sRNAの結合領域の同定が可能となるものと考える.当該sRNAへの結合成分がタンパク質である可能性も否定できないことから,アフィニティー精製時のさらなる条件検討も行なうこととする.さらに,当該sRNAの前駆体の有無を調べるためにも,ゲノムDNA上の情報を得る必要性が考えられる.そこで,ゲノムDNAを対象としたクローニングを行ない,得られた情報から前駆体を推測することを試みる. これまでに,A. tamarense,A. catenellaおよびSymbiodiniumからsRNAを単離することに成功したことから,これらクローンの中で当該sRNA以外のsRNAについて類似する塩基配列等の解析を行ない,それら配列への結合成分等の探索および機能解析を試みる. さらに,渦鞭毛藻遺伝子の発現調節機構を明らかにするためには転写因子等の情報が必要であると考えられることから,これまでに単離しているA. tamarense遺伝子の5’上流非転写領域の塩基配列情報を用い,転写因子の単離同定を試みる. その他,sRNAについて,対数増殖期や定常期の細胞間等の異なる条件下における発現解析や,網羅的なsRNAの解析を試みる.また,渦鞭毛藻の翻訳機構を明らかにするために,mRNAへの結合成分を単離し,翻訳機構解明への糸口を見出すことを試みる.
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