2015 Fiscal Year Research-status Report
低分子RNA解析を基軸とした渦鞭毛藻の遺伝子発現調節機構に関する研究
Project/Area Number |
26450289
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小檜山 篤志 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (60337988)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 渦鞭毛藻 / 遺伝子発現 / 低分子RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
初めに,データベースを用い,Alexandrium tamarenseから単離した低分子RNAのクローン,AT-1の存在を調べた.その結果,データベース上にAT-1と同一の塩基配列を有するRNAを見出すことが出来た.そこで,それらデータベースおよびAT-1の塩基配列を参考に設計したプライマーを用い,前駆体を単離するために3'および5'RACE法を行なった.3'RACE法の結果,AT-1の塩基配列の3'末端1塩基のTがAとなり,poly A tailに含まれるクローンが得られた.一方,5'RACE法では目的のクローンを得ることが出来なかった.しかし3'RACE法の際に,データベースの塩基配列を参考に,AT-1よりも5'上流に設計したプライマーを用いてもDNA断片が得られたことから,より5'上流を含むmRNAが存在するものと推測された. 次に,AT-1 RNAへの結合成分を調べた.A. tamarenseの粗抽出物,AT-1のセンスおよびアンチセンスRNAを用いてアフィニティー精製を行ない,SDS-PAGEを用いてタンパク質成分を検出した.その結果,RNAを含まない対象区では存在しないが,センスおよびアンチセンスRNAを用いた区で認められる約45kDa成分を見出すことが出来た.AT-1は塩基配列にパリンドローム構造を有していることから,本配列に結合した可能性が考えられたが,さらなる条件検討が必要であると思われた.また,AT-1へのRNAの結合も考えられることから,A. tamarenseの抽出物をゲルろ過に供した際の,AT-1を含む画分に存在するRNA成分の存在を調べたが,RNA成分の単離には至らなかった. 最後に,我々がA. tamarenseより単離した遺伝子の5'上流非転写領域を用い,転写因子のアフィニティー精製を試みた.しかしながら,結合成分を見出すことは出来なかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は,まず初めにAT-1前駆体の単離を試みた.その結果,poly A tailを含むcDNAを得ることが出来た.しかしながら,それらクローンはAT-1の塩基配列と一塩基が異なったことから,転写後修飾されている可能性も考えられた.次に,AT-1 RNAを用いて結合RNAあるいはタンパク質の精製を試みた.その結果,RNA成分は見い出せなかったものの,約45kDaのタンパク質成分が,AT-1に結合している可能性が示唆された.しかし,その成分の同定には至らなかった.さらに,Alexandrium tamarense由来遺伝子の5'上流非転写領域を用いて転写因子のアフィニティー精製を試みたものの,その単離には至らなかった. 以上のように,複数の実験に挑戦して幾つかの結果が得られた.しかしながら,タンパク質の同定には至らず,機能解明にはさらなる解析が必要であることが示された.また,得られた結果は想定していなかったものでもあったことから,これらについてより詳細な検討が必要であると考えられる.したがって,進捗状況はやや遅れていると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の結果から,A. tamarenseの低分子RNA,AT-1の直後にpoly A tailを有し,5'側にはAT-1より長い塩基配列を有するmRNAとして発現している可能性が推測された.しかしながら,転写後の調節の有無が不明であるとともに,mRNA全長を得るには至っていない.そこで最終年度は,より多くのプライマーセットを用いたRACE法を行ない,AT-1 前駆体全長のクローニングを試みる.さらに,A. catenellaの低分子RNAクローン,AC-1についても解析を行なうことにより,より正確なデータが得られるものと期待できる.他生物種のsRNAは機能する際にArgonauteのような特定のタンパク質と結合することが報告されているものの,渦鞭毛藻では明らかにされていない.そこで,データベース内に存在するArgonaute様タンパク質をコードするmRNAを見出し,cDNAクローニングを試みる.また,AT-1以外の低分子RNAについても,A. tamarenseと他の渦鞭毛藻間で一致する配列も見出している.そこで,それらRNAについても結合成分の精製および同定を試みる.これまでに複数の方法を用いてアフィニティー精製を試み,初めて結合成分を見出すに至った.このことから,RNAとタンパク質との結合が強固ではない,あるいは条件が限られている可能性が考えられる.そこで,初めにRNAとタンパク質との結合条件をより緩いものとし,徐々に厳しい条件にして精製を試みることを検討する.また,転写因子の単離同定も同様の系を用いて試みることとする.さらに,低分子RNAの培養条件による発現解析や,単離したタンパク質を同定後,cDNAクローニングや発現解析を試みることにより,渦鞭毛藻の遺伝子発現機構を調べることとする.
|
Causes of Carryover |
平成27年度中に,複数の低分子RNAについてRNA合成あるいは転写因子精製のために用いるオリゴヌクレオチドの合成を依頼することを想定していたものの,AT-1 RNAを用いたアフィニティー精製の際に予想よりも時間がかかってしまい,新たに発注するまで至らなかった.また,タンパク質の同定に至らなかったことから,次年度使用額が生じてしまった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,AT-1とは異なる低分子RNAへの結合成分の単離および平成27年度に用いたものとは異なった5'上流非転写領域を用いた転写因子の単離を試みる.そこで,これらRNA合成およびオリゴヌクレオチド合成を依頼すると共に,単離用のキットも使用する予定であることから,これらに次年度使用額を用いる予定である.
|
Research Products
(1 results)