2015 Fiscal Year Research-status Report
イルカ類の栄養吸収と細胞内での熱産生に関する分子メカニズムを解明する
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26450292
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 美和 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70409069)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱産生 / 鯨類 / 温度適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はバンドウイルカを対象として以下の成果を得た. 1.腸での栄養吸収機構の解明:腸管近位部,中部,遠位部の組織を用いてRNA-seqを行い,栄養の消化および吸収に関わる多数の分子の発現をスクリーニングした結果,アミノ酸および糖の栄養吸収に関わる分子は総じて腸の遠位部に多く発現していることが判明した.脂肪の輸送に関わる分子は中~後部に多い傾向が認められたが,腸全体にわたり発現していた.これを証明するため,代表的な分子については定量PCRを行なったところ,RNA-seqの結果を支持する結果を得た. 2.熱産生関連遺伝子が発現する器官の探索:ATPの合成および利用にともなう熱産生(熱エネルギーの放出)に着目し,多様な組織でATP量およびミトコンドリアコピー数を測定し比較した結果,骨格筋で最も多いことが判明した.また,陸上ほ乳類の骨格筋と比してもそれらが多いことが分かった. 3.熱産生に関与する血液中の物質の探索:太地町立くじらの博物館およびしながわ水族館の飼育下のイルカから年間を通じて採血を行い,複数種類の血中ホルモン濃度を測定した結果,代謝と関連のあるいくつかのホルモンが季節と連動して変化することが判明した.これらの作用については現在実験中である. 4.細胞における熱産生の分子機構の解明:イルカの腎培養細胞に複数のホルモンを添加し,ATP合成の促進およびuncoupling proteinとその関連因子の発現動態を解析している.あるホルモンについてはATP合成を促進する作用があることを確認している.現在,骨格筋細胞の培養系の確立を目指している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験についてはほぼ着手して8割がた結果を得ている.腸管での栄養吸収機構については国際学会にて発表済みであり,現在,論文投稿準備中である.また,骨格筋での熱産生能力に関する論文も作成を開始しているが,比較のための陸上ほ乳類(とくに偶蹄類)のデータを増やす必要があり,骨格筋の入手を済ませたところである.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細胞における熱産生の分子機構の解明:熱産生に関与する物質の機能実験が残されているため,① 培養細胞の作出:骨格筋について,機能実験に供するために初代培養細胞を作出し,保存する.② 機能解析実験:確立された細胞を用いて,熱産生への関与が示唆された物質のアゴニストを投与し,熱産生関連因子の発現上昇や活性化を確かめるとともに,細胞呼吸やATP産生の状態を測定し,熱産生に実際に関わる分子を絞り込む.このとき受容体特異的なアゴニストをそれぞれ使用することにより,熱産生作用に関わる各受容体を絞り込む.また熱産生関連因子の候補物質に対し,siRNAによりノックダウンをかけた時の熱産生阻害について調べ,各分子の機能を確定する. (2)論文投稿:今年度は最終年度となるため,①熱産生関連ホルモン,②腸での栄養吸収機構,③熱産生器官としての骨格筋の能力,の各々について論文を投稿する予定である.
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Research Products
(10 results)