2015 Fiscal Year Research-status Report
イルカにおける臓器特異的バイオマーカーの同定と超早期疾病診断法への応用
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26450293
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 琢也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20307820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イルカ / バイオマーカー / 診断 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,飼育下のイルカにおいては,健康管理および傷病治療をする上で大きな課題となっている炎症性疾患を早期に診断することが求められている。本研究の主題であるイルカの臓器特異的バイオマーカーは,血液検査によって炎症が生じている臓器や組織を特定することができると予想される。それらを探索するために,前年度までに臓器特異的バイオマーカーの候補としてハンドウイルカの諸臓器から作製したsmall RNAライブラリーから62種類のイルカmicroRNAを同定することができた。さらに,これらの組織発現レベルを検討した結果,特定の臓器で高発現することが認められる数種のmicroRNAを選定することができた。 そこで本年度は特定の臓器で高発現を示した8種のmicroRNA,すなわちmiR-23b,miR-103,miR-122-5p,miR-125b,miR-199a,miR-204,miR-221およびmiR-223を調査対象として,臨床上異常が認められない健常なハンドウイルカの血漿中濃度を測定した。その結果,miR-223を除く上記7種のmicroRNAの血漿中濃度は著しく低値を示し,これら特定臓器で高発現しているmicroRNAは,臓器特異的バイオマーカーとして理想的な特徴を持つと考えられた。一方miR-223は,健常イルカの血漿から比較的高濃度で検出されたため,血中microRNAの品質評価や内部標準遺伝子としての活用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のとおり,平成27年度はイルカの血液におけるmicroRNAの発現解析を行い,前年度までに明らかにした臓器・組織において特異的な発現パターンを認めたmicroRNAの多くが健常なイルカの血漿中では極微量であることを確認した。また血中microRNAの品質評価として期待できるmicroRNAも明らかになった。このように炎症性疾患等によって特定の臓器に損傷を受けた場合,そのバイオマーカーの候補として本研究で同定したmicroRNAが有用であることを把握できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したイルカmicroRNAについて,臓器・組織特異的発現が認められたものを選定し,健常個体を比較対照として炎症疾患罹患個体の血中における濃度を調査する。炎症疾患個体で高値を示すmicroRNAをバイオマーカー候補として生体内変動を検討する。生体内変動を把握した後に,つづいて特定の炎症性疾患のグレードと血中microRNA濃度との相関について検討し,炎症性疾患の重症度を血液検査から評価できるか検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究に必要な遺伝子増幅法について,効率的手法を確立でき,当初予定していた試薬を購入する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に計画している物品費のうち,試薬類の経費に充当し,さらなる研究の進展を図る。
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