2014 Fiscal Year Research-status Report
魚類の塩類細胞における新規機能(H+・NH4+・Cs+の排出)の解明
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26450295
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
廣井 準也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20350598)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 塩類細胞 / Rh因子 / Na+/H+交換体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ニジマスの鰓について,プロトンとアンモニアの排出に関係すると予想されるトランスポーター群の局在を明らかにすることを試みた.プロトンの排出は体液の酸塩基調節のかなめであり,アンモニアの排出は窒素代謝の最終過程であるため,これらのメカニズムを明らかにすることは魚類生理学・水産増養殖学の両面から重要である. アンモニアの輸送に関与していると予測される3種類のRh因子(Rhcg1,Rhcg2,Rhbg)について,特異抗体を作成した.淡水で飼育しているニジマスを淡水(対照)・海水(20psu人工海水)・低イオン水・酸性水(pH4.5)の4区に1週間馴致させ,Na+/H+交換体(NHE3b)とRhcg1,Rhcg2,Rhbgを同時多重免疫蛍光染色によって単一細胞レベルで可視化した. NHE3bはニジマスの3種類の塩類細胞のうちの1種類にみられた.Rhcg1はNHE3bとほぼ同じ細胞内局在をしめし,特に低イオン環境において陽性反応が増大した.Rhcg2は塩類細胞ではなく呼吸上皮細胞にみられ,Rhbgは塩類細胞と呼吸上皮細胞の両方にみられた.Rhcg1とRhcg2は,それぞれの細胞の,環境水と接する側の細胞膜に局在したのに対し,Rhbgは基底膜と接する側の細胞膜に局在した. これらの結果から,鰓においてアンモニアは,従来考えられていたように細胞膜を透過して排出されるのではなく,Rh因子がガストランスポーターとして機能することによって排出されることが示唆された.また,アンモニアの排出とプロトンの排出が連携していることも示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮細胞による方向性を持った物質輸送,すなわち「ベクトル輸送」のメカニズムを明らかにするためには,単一細胞レベルで候補輸送体タンパクの細胞内局在を可視化する必要があり,候補輸送体に対する特異抗体の作成が不可欠となる.抗体の作成に関しては,期待通りの抗体を得ることができない例も多いが,今回はさいわいにも,3種類のRh因子のすべてについて,特異抗体の作成に成功した.さらに,これら3種類のRh因子とNa+/K+-ATPaseの合計4種類を同時並列的に可視化できる4重免疫蛍光染色を確立することに成功した.これまでは,単一のRh因子を対象とした研究しか報告されていないため,今年度確立した3種類のRh因子すべてを同時並列的に可視化する技術は,魚類のプロトン・アンモニア排出メカニズムの解明に大きく寄与することが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度確立した3種類のRh因子すべてを同時並列的に可視化する技術を用いて,淡水・海水・低イオン水・酸性水のそれぞれに順応させたニジマスの鰓における各輸送体の局在変化を詳細に観察する. これまで,Rh因子(Rhcg1)とNa+/H+交換体(NHE3b)は,塩類細胞の環境水と接する側の細胞膜に共局在すると予測されていたが,今年度の観察において,局在中心が微妙に異なる可能性が見いだされた.すなわち,Rhcg1は細胞膜に限定的に局在するのに対し,NHE3bは細胞膜そのものよりも細胞膜直下の領域(=sub-apical region)に局在の中心がみられた.ただ,現在使用している共焦点レーザー顕微鏡では,これらの局在の違いを厳密に証明することは難しい.次年度には,所属研究機関の共通機器として超解像レーザー顕微鏡(Zeiss LSM 800 with Airyscan)が導入される予定であり,この超解像レーザー顕微鏡のポテンシャルを最大限に引き出すことによってRhcg1とNHE3bの局在変化を明らかにすることを目指す.
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Causes of Carryover |
特異抗体の作成費用として約30万円を予定していた分が,以前に作成した抗体が使用可能であることが判明したために,不必要となった. また,予定していた遺伝子クローニングを行わなかったために,約17万円が不必要となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな特異抗体3種類(Ca2+チャネル,Na+/HCO3-共輸送体,Cl-チャネル)の作成に約30万円を予定する. 前年度行わなかったNa+/Cl-共輸送体の遺伝子クローニングに約17万円を予定する.
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Research Products
(4 results)