2015 Fiscal Year Research-status Report
魚類の塩類細胞における新規機能(H+・NH4+・Cs+の排出)の解明
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26450295
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
廣井 準也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20350598)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 塩類細胞 / Rh因子 / Na+/H+交換体 / メタボロン / デコンボリューション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度,ニジマスの鰓において,Rh因子(Rhcg1)とNa+/H+交換体(NHE3b)が塩類細胞の頂端膜に共局在し,両輸送体が機能的複合体(メタボロン)を形成することにより,H+の排出・アンモニアの排出・Na+の取り込みが協調的に行われている可能性が示唆された.しかし,従来の共焦点レーザー顕微鏡では,光の回折現象のために,より高解像度での観察が不可能であった.本年度は,デコンボリューションソフトウエアHuygens Essentialを新規購入し,数学的処理(最尤法によるデコンボリューション)によってRhcg1とNHE3bの共局在をより高解像度で解析することを試みた. その結果,通常淡水に順応させたニジマス鰓の塩類細胞では,Rhcg1・NHE3b共に,頂端膜の表面に集中せず,表面下に約1,000ナノメートルの幅をもって分布していた.さらに,Rhcg1の局在の中心は頂端膜の表面から約300ナノメートルの範囲に集中していたのに対し,NHE3bは頂端膜の表面から約300ナノメートルの範囲には強く発現せず,300~1,000ナノメートルの範囲に幅広く分布していた.つまり,Rhcg1とNHE3bの分布中心がずれていることが,初めて明らかとなった. 次に,低イオン水に順応させたニジマス鰓の塩類細胞を解析したところ,通常淡水と大きく異なり,Rhcg1・NHE3b共に,頂端膜の表面から約200ナノメートルの範囲に集中して分布していた.つまり,Rhcg1とNHE3bの分布中心がほぼ一致するようになった.これらの結果は,Na+が体内からどんどん奪われる低イオン環境において,Rhcg1とNHE3bによって形成されたメタボロンがより効率的に機能してNa+の取り込みを促進させていることを強く示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の輸送体タンパクによる機能的複合体(メタボロン)を解析するためには,従来の共焦点レーザー顕微鏡を超える高解像度の顕微鏡画像取得・処理システムが必要となる.本年度は,本来なら所属研究機関の共通機器室に最新の超解像レーザー顕微鏡(Zeiss LSM 800 with Airyscan)が導入される予定であったが,私立大学等研究設備整備費等補助金が交付されなかったため,超解像顕微鏡の導入が中止となった.しかし,代替策としてデコンボリューションソフトウエアHuygens Essentialを購入したところ,超解像顕微鏡に迫る高解像度の画像を解析することが可能となった.具体的な成果として,Rhcg1とNHE3bの共局在の微細スケール(200ナノメートル以下)での変化を解析することが可能となった.Huygens Essentialは810,000円と高価なソフトウエアであったが,本研究においてはその価格以上の効果が得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に購入しその効果を確認できたHuygens Essentialによるデコンボリューションをさらに有効活用し,ニジマス鰓の塩類細胞における重要トランスポーター群の局在様式をリマッピングすることを目指す.本年度は,理論的な点像分布関数(theoretical PSF)を用いたデコンボリューションで予想以上の高解像度の画像解析が可能となったが,次年度は,点像分布関数を測定することにより(measured PSF),さらなる解像度の改善を目指す. 具体的な解析項目として,本年度解析したNHE3bとRhcg1に加え,さらに,Rhcg2, Rhbg, NBC1, NKCC1a, NCC2についても,局在様式を微細スケールで明らかにする.また,淡水・海水・低イオン水・酸性水のそれぞれに順応させた時の各トランスポーターの局在変化についても,これまで検出できなかった微細な変化を可視化できることが期待される.
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Causes of Carryover |
本年度はデコンボリューションによる高解像度画像解析に集中したため,当初予定していたCa2+チャネル,Na+/HCO3-共輸送体,Cl-チャネル特異抗体に対する抗体の作成とNa+/Cl-共輸送体の遺伝子クローニングを来年度に行うことにした.そのため,本年度は抗体の作成費用約20万円とクローニング費用約15万円が不必要となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度行わなかった,Ca2+チャネル,Na+/HCO3-共輸送体,Cl-チャネル特異抗体に対する抗体の作成に約20万円を予定する. 前年度行わなかったNa+/Cl-共輸送体の遺伝子クローニングに約15万円を予定する.
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[Journal Article] An evolutionary insight into the hatching strategies of pipefish and seahorse embryos2016
Author(s)
Kawaguchi M, Nakano Y, Kawahara-Miki R, Inokuchi M, Yorifuji M, Okubo R, Nagasawa T, Hiroi J, Kono T, Kaneko T
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Journal Title
Journal of Experimental Zoology. Part B, Molecular and Developmental Evolution
Volume: Early View
Pages: Early View
DOI
Peer Reviewed