2016 Fiscal Year Research-status Report
畜産農家間の風評被害発生メカニズムと低減方策としてのリスクコミュニケーション
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26450300
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
宮崎 さと子 (窪田さと子) 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90571117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 風評被害 / リスクコミュニケーション / 家畜感染症 / 行動経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では、家畜感染症発生時の農家行動と関連機関との連携について聞き取り調査を行い、リスクコミュニケーションの実態や被害の程度について明らかにし、その解決方法を検討していくことを目的とした。 地域内の人間関係の親密さは「周囲に迷惑をかけたくない」という意識を強め、その結果として孤立や加害者となることに対する恐怖心が醸成されることが示唆された。逆に周囲に迷惑をかけることを恐れて淘汰を進めていると、周囲の農家が敬遠してしまうケースも指摘されている。さらに、報道のあり方によって誤解や必要のない警戒心を生んでいる状況も明らかとなっている。また、家畜感染症が発生したことで起こる地域同業者との不調和は簡単に解決するものではない。一般消費者を対象とした場合、報道の終息とともに風評被害も減少していくことが言われているが、地域同業者間を対象とした場合、発生時の対応がその後の関係性を決定していくようである。 これらを解決する手段として、関連機関からは、国による情報の透明化が報告のインセンティブと適切な行動に繋がるという意見が示された。情報の透明化は、たんに家畜疾病の発生の情報を公表することだけでなく、防疫対策の実施程度等の指標も有効になってくるだろう。 以上の情報を踏まえ、同業者間の風評被害発生メカニズムを明らかにするための予備調査を実施し、現在内容の精査を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
H27年度に不測の事態が起きたことにより、研究予定を1年ずつ繰り下げることで対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
風評被害のコントロール方策について検討するために、風評被害に対する国家間の規制及び対応の違いについて比較検討を行う。欧米諸国における風評被害軽減のためのリスクコミュニケーション方策として、①食品のリスクに関する科学的根拠をマスメディアに説明する訓練されたスポークスマンが存在し、一般消費者やマスメディアが正確な情報を理解するまで時間をかけて対話し続けていること、②それぞれの国の評価機関、管理機関がマスメディアの影響を重要視して、戦略的なストーリーをたてて対応していることを指摘している。風評被害事例とリスクコミュニケーション対応を整理し、わが国の現状と比較することで、どの機関がどのような方法でリスクコミュニケーションを行っていくべきか示唆を与える。 これらの結果を踏まえ、畜産業者間の風評被害発生を抑制するためのリスクコミュニケーションのあり方と政策的含意を導き結論とする。
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Causes of Carryover |
平成27年度に、研究代表者の体調不良と調査先の都合により研究を中止せざるを得ない状況となった。したがって、研究予定を1年繰り下げて対応している。平成28年度に研究課題の最終年度を向かえる予定であったが、上記理由により平成29年度を最終年度として計画を実施中である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画では、平成28年度にはリスクコミュニケーションに関する研究会への参加及び聞き取り調査としての旅費および成果報告やワークショップ等の実施に係る経費を計上していた。「理由」に記載した通り、研究予定を1年繰り下げているため、平成29年度はこれらの旅費および経費に使用する予定である。
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