2016 Fiscal Year Research-status Report
農政改革下における担い手育成支援と地域営農システムの実証的研究
Project/Area Number |
26450305
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
秋山 満 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10202558)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 担い手育成 / 経営所得安定対策 / 農地中間管理機構 / 連携システム / 地域農業システム化 |
Outline of Annual Research Achievements |
TPP交渉がアメリカ不参加により、ほぼ中断することが決定しており、日本農業を取り巻く国際環境は大きく変化した。ただし、それに代わり、日米二国間交渉が今後本格化することが予想され、そうした動向に引き続き留意していく必要がある。土地利用型担い手をめぐる環境は、平成30年より国による生産調整配分が廃止されることから、ポスト生産調整を横目に、農業団体中心の需給調整対策が求められている。全国的には農業団体と共に、県等自治体で参考値等を配分予定であるが、生産調整に対する規範が崩れた場合、米価の下落と産地間競争が強まることが懸念されている。こうした中で、各地域では担い手への農地集積と、集落営農など集団的組織化により担い手への農地集積を8割にまで引き上げることを目標としており、県単位で設立された農地中間管理機構を活用した農地集積の事例も見られる。中間管理機構では、それまでの貸借関係と比較した場合、単なる農地の中間保有に留まらず、流動農地に対する受け手を公募する点にその特徴がある。しかし、農地の借受段階と貸付段階の分離により、事務手続きが煩雑化すると共に、貸借決定までの期間が長期化、加えて従来現物小作料が認められていないなどの点で、その活用はなお低位に留まっているのが現状である。こうした中で、圃場整備と連動した農地中間管理機構の活用が全国的に広がっており、そうした取り組みに着目する必要がある。本年度は、こうした問題状況をを踏まえて、個別集積タイプの地域と集落営農集積タイプの地域を念頭に調査を行うと共に、2年目の農地中間管理機構の活用状況を全国的に検討することで、担い手形成と農地流動化、農地管理の課題を実態的に検討してきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ大統領選の影響で、TPP交渉の動向が不透明になり、TPP合意を前提にしていた農政改革の動向も若干変化しつつある。今後の日米二国間交渉の動向も視野に入れながら、農政改革の動向と影響について検討していく必要がある。県の農政審議会と宇都宮市の審議会の会長に就任したため、予定より実態調査の日程確保が難しく、少し実態調査が遅れている。他方、センサス統計の公表(継続中)、農地中間管理機構の実績統計、経営所得安定対策のと莉組む動向などのデータ収集と分析は順調に進展してきている。ただし、担い手の動向をめぐっては、平成30年からの国による生産調整配分廃止と、経営所得安定対策の一部収入保険制度へ移行が検討されており、そうした制度改定の中身がまだ未確定なものも多く、制度変更について引き続き情報収集とその影響について検討していく必要がある。担い手の動向に関しては、農地流動化の進展と大規模化が加速化してきており、個別経営で50ha以上、集落営農で100haを超える経営体も珍しくなくなってきている。また、圃場整備や中間管理機構の活用を契機に、担い手の組織化や集落営農の育成を図る事例も見られ、担い手の形態は多様化してきている。他方、担い手の高齢化も進展してきており、世代交代を契機に、担い手がグループ化して法人化を目指す形態も見られる。現時点では、担い手の育成と共に、事業継承を視野に入れた組織化の形態が問題となっている。加えて、こうした担い手組織の補完組織、あるいは、地域の主要な生産主体としてJAや自治体の出資した公協型担い手の育成も進展してきており、こうした担い手の多余蘊化に対応した地域営農システムの確立が課題となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究の最終年度に当たるので、積み残していた地域への実態調査と共に、これまで調査した地域における補足調査を行うことで、担い手の多様化と地域差を踏まえた担い手形態の実態調査を取りまとめていく。また、農業センサス(公表経過中)、集落営農実態調査、農地中間管理機構の実績調査を踏まえて、全国的な担い手形成の現段階の検討を行うと共に、集落営農の経営実態、農地中間管理機構活用動向に関して統計分析を進めていく。さらに、国では担い手への農地集積8割と米のコスト目標9600円を掲げていることを踏まえて、大規模担い手層のコスト構造と経営実態を検討していく予定である。また、土地利用型担い手においても、米価の下落と生産調整の拡大で、単作型規模拡大では経営展開が困難化してきており、補完部門として機械で収穫できる機収型園芸作物の導入など経営複合化が進展してきている。加えて、独自販売や農産加工品の販売など、いわゆる6次産業化による事業多角化も進めてきている。こうした経営複合化や多角化においては、従来の家族経営の枠を超えた労働力調達と周年雇用化が要請されており、雇用型・組織型経営発展の一契機となっている。今年度の調査においては、こうした経営複合化や多角化を進める経営体において、個別タイプと集団タイプ、また集落営農タイプと公協型出資法人タイプなど担い手の形態と関連付けながら経営展開の類型化を検討する。以上の知見を元に、こうした多様化する担い手を補完システムとして、耕蓄園連携を図る地域における担い手間のネットワークシステム、異業種との戦略連携を図る地域ネットワークシステム、また実需者や消費者など生産者と消費の連携を図る生消ネットワークシステムの3重の地域連携システムの確立として地域農業システム化の課題を検討する。
|
Causes of Carryover |
昨年度・本年度は、県の農政審議会の会長と宇都宮市の農政審議会の会長に就任しており、県・市の農政審議会の出席とプラン策定に向け取り組んだ。そのため、昨年度の繰り越し金と現地調査で予定していた地域調査が日程的に難しくなり、ほぼ昨年の繰越額が次年度繰越となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、最終年度であるため、上記の積み残し調査地域、および、これまで調査した地域の補足調査を中心に使用していく計画である。
|