2014 Fiscal Year Research-status Report
気候変動に対する途上国農業の脆弱性評価と適応可能性に関する研究
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26450306
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
丸山 敦史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脆弱性 / フィリピン / インデックス分析 / 世帯調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、脆弱性の高い地域の特定に関する研究資料を収集し、得られた知見を整理するとともに分析手法の問題点を精査した。近年は衛星画像や自然災害の被害データが入手しやすく、そのため国際的な比較分析や国別のインデックス分析といったマクロ的な知見が急速に集積されていた。その一方で、途上国を対象に市町村や村落レベルの脆弱性を評価した研究は大変少なく、農家や世帯といった個別経済主体レベルでの多面的な評価を試みている研究はほとんどなかった。次に、個別経済主体レベルの脆弱性インデックスに関する調査研究が十分に行われていないことに鑑み、気候変動に対する世帯の社会的脆弱性を把握するための調査を比国ラグナ州で実施した。インデックスウェイトの評価は現地の複数の専門家に依頼し、その他のデータは州内の一般世帯への聞き取り調査から得た。分析の結果、社会的脆弱性は複数の要因によって規定されるため多面的な評価が必要であること、社会的脆弱性には教育年数と労働者割合といった個人・世帯属性が影響を与えるものの、農家であるという属性は強く影響しないことなどが明らかになった。更に、脆弱な集団の特定に関する研究として、ラグナ州に属する46ケ村を訪問し、気候変動に対する対応策や農業部門の被災状況などについて聞き取り調査を行った。調査村の内訳は、アグロフォレストを基幹とする村が9村、コーン作が3村、漁業・養殖業が11村、稲作が13村、野菜作が10村である。調査の結果、気象災害に対する対応の阻害要因は資金不足によるものであり、被災後の復旧は政府の支援に依存しがちであるという構造が明らかになった。他方で、自然災害に対応するためのコミュニティー組織への住民参加の度合いや、深刻な農業被害をもたらす災害の種類、脆弱性の改善のために取りうる対策については、村間のばらつきが大きいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査では近年の研究動向と既往研究の問題点を明らかにし、現地調査では気候変動に脆弱な地域・集団の特定に必要な基礎的情報が収集され、また、いくつかの知見が得られていることから、当初の計画に沿って概ね順調に進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は前年度の研究成果を再検討するとともに、脆弱な集団の特定に関する研究を継続する。最終年度は脆弱性への対応に関する研究を行う。当初計画から大きな変更がないが、研究計画に余裕が出た場合は調査対象の拡大などについて検討したい。
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