2014 Fiscal Year Research-status Report
FTA/EPAの関税引き下げが農産物の輸出入に及ぼす影響の事後評価分析
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26450307
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 弘明 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (70329019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 敦史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (90292672)
石田 貴士 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (30623467)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農産品貿易 / 特恵関税 / 事後評価分析 / 時系列分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
WTO交渉が延期された一方で進展するTPPなどの地域貿易協定による農産品輸出入への影響を見通すため、締結済みの経済連携協定・自由貿易協定がもたらしたとみられる影響を、事後的に評価する視点から、差別的な関税引き下げによる貿易転換効果と貿易創出効果をわが国と主要貿易相手国を対象に品目別に評価し、あわせて応用一般均衡分析など既往研究の前提条件の妥当性を検証することが本研究の課題である。 本年度においては、第1に関連文献のサーベイを進めつつ、わが国および分析対象国の農産品輸出入実績を、国連Comtradeデータから抽出・整理して、課題に対応する詳細な現状分析と各種の統計分析が可能なデータセットとして構築する作業を進めた。 第2にわが国フードシステムをめぐる経済環境を、各種貿易協定の動向、近年における農産物国際価格と為替レート変動の影響評価等の視点から概説する論文を日本フードシステム学会叢書に掲載した。 第3にわが国農産物輸出の近年の動向を、主にわが国の通関統計によって捉える考察を行い、日本フードシステム学会個別報告において発表した。わが国農産品の輸出振興においてはしばしば「価格より品質・高級感」が強調されるが、2013年になってからいくつかの品目でみられる輸出の拡大は、輸入国のトレンド、相手国の検疫制度やわが国の生産事情だけではなく、価格要因の重要性が示唆された。 第4に、わが国にとって重要なFTA相手国であるタイにおける、近年のコメ関連諸施策の経済効果を評価する計量経済分析を行い、日本農業経済学会個別報告において発表した。価格支持政策が農業者の所得支持する効果を、直近の政権が打ち出している投入財への補助政策と対比させた。前者の効果が天水稲作と灌漑による二期作とでは著しく異なること、後者による効果が、農業者の所得を支持する効果はあまり大きくはならない可能性のあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度は、TPPなどの地域貿易協定による農産品輸出入への影響を評価するため、既に締結された経済連携協定・自由貿易協定がもたらしたとみられる影響を、事後的に評価する視点から、差別的な関税引き下げによる貿易転換効果と貿易創出効果をわが国と主要貿易相手国を対象に品目別に捉え、あわせて応用一般均衡分析など既往研究の前提条件の妥当性を検証するため、文献サーベイ、学会への参加、国際機関等の専門家との意見交換によって、現状および制度的な側面に関する知識を収集するだけではなく、比較的早期の協定相手国であるメキシコ、タイなどを対象に国連comtradeデータに依拠する分析用データセットを構築することを計画した。これにより貿易政策の変更による貿易転換効果と貿易創出効果を計量経済学的に捉える分析を行う予定であったが、データセットの作成作業はなお途上にある。ただし農産物貿易問題に関する統計分析については一定の成果をあげた。
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Strategy for Future Research Activity |
文献サーベイ、学会への参加、国際機関等の専門家との意見交換によって、現状および制度的な側面に関する知識をさらに収集する。比較的早期の協定相手国であるメキシコ、タイをはじめ、わが国との貿易関係で重要な位置を占めるアメリカ、オーストラリア、ブラジル、中国などを対象に研究課題の計量分析を行うためのデータセットを構築する。これにより自由貿易協定の実施による貿易転換効果と貿易創出効果を定量的に考察する。 また、協定相手国ないし分析対象を、わが国農産品輸出のターゲット市場と目されるASEAN諸国をはじめ、2008年前後以降にEPAを締結した国・地域に広げ、わが国対相手国の関係だけではなく、外国同士の関係にも注目する。以上の知見と関連づけつつ、時系列分析および重力モデルによる経済分析などを試みたい。
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Causes of Carryover |
データセット作成のための人員(大学院生を想定)が予定どおり確保できず、また現地カウンターパートとの日程調整がうまくいかず予定した現地調査が実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データセット作成のための人件費・謝金を研究計画時よりも増額し、また国内学会への出席と外国調査を増やしたい。
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Research Products
(4 results)