2015 Fiscal Year Research-status Report
農業・農村の維持発展とネットワーク組織の進化:ドイツのマシーネンリングを中心に
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26450311
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
淡路 和則 龍谷大学, 農学部, 教授 (90201904)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農業組織 / 農作業受委託 / マシーネンリング / 農作業請負業者 / 営農支援 / 地域農業活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツの農作業受委託の担い手である農作業請負業者とマシーネンリングを対象として農作業受委託と非宝形生産分野でのサービス提供について実態調査を実施した。 農作業請負業者についてニーダーザクセン州を対象に調査を実施し、農業生産以外の公共緑地保全や街路樹剪定、側道の草刈りなどの作業が増加していることが確認できた。また、堆肥・スラリー散布など環境保全に関するサービスは、事業規模が大きな請負業者を中心に請負が増加していることが確認された。農作業受託については、職業教育において農作業請負サービスの新たな分野を形成して、担い手の確保と技術水準の高度化が図られており、農業生産の分野での制度的枠組みの整備が進んでいることが明らかとなった。 マシーネンリングについては、バイエルン州を対象に調査を実施した。月450ユーロの副業収入を上限とする非課税のミニジョブの制度を利用して、畜産経営を対象として副業としての労働力の仲介斡旋が進んでいることが確認された。これは従来のヘルパー派遣とは性質を異にしており、定期的な労働提供による副収入の機会創出であった。これは、将来的に他の農業生産分野や農村空間保全のためのサービス提供に広がる可能性、さらには非農家の取り込みへの可能性をもつものと考えられた。農村空間保全等の非農業生産分野のサービスについては、自治体が実施するよりも低コストで実施が可能であり、当該サービスの拡大と税制等の法制度への適合のために、当該部門を子会社化しており、農村空間保全業務を多様な主体で担う行う組織構造になっていることを明らかにできた。また、マシーネンリング組織を通じた購買力を背景に自家用車、携帯電話等の農業生産投入材以外の用品を低価格で提供する取り組みも拡大してきていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実態調査によって文献ではわからないことが明らかとなり、想定していた以上の情報を収集することができた。具体的には、農村空間保全サービスへの地域農家の参加について制度的な問題と農家サイドおよび地域(自治体等)サイドのニーズの実態を把握することができた。さらには、職業教育について、農作業受委託に関わる新たな職域を形成するプロセスについて把握することができ、新たな知見を提供することを可能にした。 他方、調査の時期について条件が合わず、ドイツ以外の国での調査ができなかったので、文献等での情報収集にとどまり、ドイツの特徴を他の欧州国と比較して特徴を浮き彫りにすることができなかった。ドイツ周辺諸国の調査研究は、次年度に持ち越すことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで実施できなかったドイツ周辺諸国(デンマーク、オーストリア等)での調査を実施し、農作業受委託と農村空間保全のサービスの展開とそれを担う組織構造をドイツと比較する。 ドイツについては、補足調査を含めて実態調査を引き続き実施し、組織間連携に注目しながら、農作業受委託と非農業生産分野(農村空間保全等)に関わる組織構造の展開をトレースし、整理する。とくに制度的変革と組織変化の関係にポイントを置いて実態把握を進める。 日本においても、農作業受委託の展開と担い手組織の展開、農村空間保全と担い手組織について把握する実態調査を引き続き実施し、関係する組織構造の発展過程を整理する。その際に農協の事業に注目し、地域農業および地域経済社会を支援する役割を考察する。 以上を踏まえて、日独、ドイツ周辺諸国を含めて日欧の比較を行い、農業・農村の維持発展に資する関係組織の関連構造を分析する。さらに、垂直的な包括的協同組織と水平的な経済組織のネットワークの観点から調査対象国の組織構造を比較考察する。
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Causes of Carryover |
海外調査を主たる対象国のドイツ以外にもデンマークで実施する予定であったが、調査時期等条件が合わなかったために実施を見送り翌年度に持ち越すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツ以外の実態調査を行うことによって、持ち越した差額を使用する見込みである。
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