2016 Fiscal Year Research-status Report
農業・農村の維持発展とネットワーク組織の進化:ドイツのマシーネンリングを中心に
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26450311
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
淡路 和則 龍谷大学, 農学部, 教授 (90201904)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農業組織 / 農作業受委託 / マシーネンリング / 農作業ヘルパー / 営農支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツのマシーネンリングを主な対象として、家族経営中心で比較的経営規模が小さい南ドイツの生産を継続する地域社会的な仕組みについて調査した。今年度は、農業生産分野における農作業の担い手(労働力)の確保に重点を置いてヒアリングを行った。その結果、それに関わる二つの動向を把握することができた。 ひとつは、労働ピーク時対応と傷病等で家族労働力を欠く場合の対応としての労働力仲介斡旋である。農作業従事者の仲介斡旋については、従来、農作業ヘルパー(経営ヘルパー)および家政ヘルパーをマシーネンリングの会員の相互扶助をベースにパートタイム労働によって行っていたが、経営規模の拡大に応じてヘルパー要員としての出役が困難になってきたために、専業ヘルパーを雇用するケースが増えてきている。さらには、農作業に限らず森林作業、景観保全など非農業分野の用務を含めて人材を派遣するサービスを実施するために一定の労働力を雇用する動きがみられた。その意味では、機械銀行としての機能よりも労働力銀行としての機能が高まっているとみることができた。 二つ目は、作業ピーク時の労働力確保は各農業経営が行うが、それに付帯する業務をマシーネンリングが行う動きである。とくに果樹作地域では収穫の繁忙期に外国人労働者を雇用することが一般化しているが、労働者確保は基本的に各農業経営が行っている。そのなかでマシーネンリングは、外国人労働者を受け入れる法制度的手続き、賃金支払い等会計処理、労務実績報告、住宅斡旋などのサービスを導入・拡充する動きが確認された。マシーネンリングは一般的に農作業受委託仲介が核となる組織(ネットワーク)であるが、こうしたケースでは各農作業従事者の仲介斡旋という部分よりも、それに関わる条件整備とマネジメントを担っているといえ、地域農業の部門構成によってサービス構造が異なると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した調査研究はほぼ遂行できていると評価できる。家庭の事情(看病・介護)により一部の調査ができなかったが、最低限の基本部分は実施できたといえる。今年度は、農作業の担い手の確保とりわけ作業ピーク時における労働力確保について、新たな展開を捉えることができた。しかしながら、整理が十分とはいえず理論的な考察が十分とはいえない部分があった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究で注目ポイントとしてあげられたマシーネンリングの農業生産以外の領域でのサービス拡充とその担い手の調査を進める。その際には、サービスに関わる経済主体間、関係組織間の関連構造に着目する。これは、ドイツ等の国外対象国のみならず日本の事例も含めて分析を進める。そして、農作業受委託を中心とする農業生産部門と地域保全に関わる非農業生産部門でのサービス展開について、それぞれの主体の関連を踏まえた比較考察を行う。さらに、組織論的な理論考察を進め、これまでの調査研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
年度途中で家族の看病・介護の必要が生じ、研究を中断せざるを得ない状況となり、一部調査研究を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査研究のなかで未了になった部分を実施し、ネットワーク組織の観点からのこれまでの調査結果について理論的考察を進める。
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Research Products
(2 results)