2015 Fiscal Year Research-status Report
農村社会における信頼と協力に基づく農業経営の規模拡大の可能性に関する分析
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26450314
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
武藤 幸雄 香川大学, 農学部, 准教授 (90596123)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 経営規模拡大 / 農地貸借仲介 / 経営者能力 / 経営改善努力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には,研究の中間まとめとして以下の学会報告をおこなった.①武藤幸雄「新規就農者に対して周囲の農業者が利他性を強める誘因に関する考察」,日本農業経営学会研究大会報告,2015年9月,北海道大学. ②武藤幸雄「集落営農の効果に関する農業者の理解促進の取組事例」,地域農林経済学会大会報告,2015年10月,鳥取大学.③武藤幸雄「農業経営者の農地貸借仲介への働きかけとその借地面積変化への影響」,日本農業経済学会大会報告,2016年3月,秋田県立大学 ①では,経営大規模化を志向する新規就農者が周辺の農業者から農地貸借仲介の協力をいかに得られるかについて経済モデル分析を通じて示した.②では,集落営農の設立による経営大規模化を検討している農業者が,経営大規模化の効果に関する試算内容について検討するワークショップへの参加を通じて,周囲の農業者との協力関係を築く誘因を持ち得ることを香川県内の事例により実証した.③では,農業経営者が農地貸借仲介の協力を求めて農業委員,農地中間管理機構,知人,友人に働きかけることが,彼らの借地面積の変化量にいかに結びつく傾向があるかについて実証分析をおこなった. ①,②の研究内容をまとめた論文として,次の④,⑤をそれぞれ日本農業経営学会,地域農林経済学会の学会誌に投稿し,査読を経て採用受理の通知が得られた. ④武藤幸雄「新規就農者の農地借入への支援に関するモデル分析」,『農業経営研究』掲載予定.⑤.武藤幸雄「集落営農の効果に関する農業者の理解支援に関する考察―効果の試算結果に関するワークショップを通じて―」,『農林業問題研究』掲載予定. 以上の研究活動を通じて,農業経営者が周囲との信頼関係を構築しながら周囲から農地借入の協力を得られる状況や,周囲との意識共有を通じて集落営農の設立に向けて動き出す状況について,実証的知見を得ることが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度には,香川県の農業経営者の農地集積状況,また,経営改善に向けた努力状況についてアンケート調査や経営事例調査を実施し,それらの実態について多くを把握することが可能になった.この結果,農業経営者が周囲との信頼関係を構築しながら周囲から農地借入の協力を得られる状況や,周囲との意識共有を通じて集落営農の設立に向けて動き出す状況について,いくつかの実証的知見を得られるようになった.そして,その成果を学会報告,研究論文にまとめることが可能になった. 他方で,農業経営者がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しうるか,また,その協力関係に基づいて農業経営者が生産,販売等の面で経営者能力をいかに高めうるのか,について実証研究に取り組む計画を当初から構想していたものの,いまだ十分には実行できずにいる.これは,前述のアンケート調査に着手するまでに,先行研究の把握,調査項目の絞り込みで予想より多くの時間がかかったためである.この点では半年程度の研究計画の遅れがあると認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画は,以下の三点にまとめられる. 1.平成27年度に実施したアンケート調査の回答結果を用いて,農業経営者の経営者能力との蓄積状況と農地集積状況がどのように関係しているかを分析して論文にまとめる.
2.香川県内で新規就農者が周囲の農業者,地権者の協力を得ながら経営大規模化に成功している事例について実態調査をおこなう.そして,新規就農者の周辺の地権者,農業者が新規就農者に対してどのようにして協力を申し出る誘因を持つようになったかについて,分析を進めて論文にまとめる.
3.農業経営者がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しているか,また,その協力関係に基づいて農業経営者が生産,販売等の面で経営者能力をいかに高めているかについて把握するためのアンケート調査を香川県においておこなう.そこで得られた回答結果を集計して,JAの組織文化に応じて,農業経営者による協力関係の構築状況,JA活動を通じた経営者能力の育成状況に差異が現れいないかどうかを計量経済学的手法で検証する.この分析結果を整理してまとめた上で学会報告をおこなう.
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Causes of Carryover |
本研究では,農業経営者がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しているか,また,その協力関係に基づいて農業経営者が生産,販売等の面で経営者能力をいかに高めているか,についてアンケート調査に取り組む計画を構想していた.しかし,農業経営者の経営概況について把握するための別のアンケート調査計画を優先させたため,上記のアンケート調査計画は平成27年度中に実行することができなくなり,実行が平成28年度にずれこむことになった.前者のアンケート調査に要する研究費が消化できなかったため,平成27年度の実支出額は,当初想定していた所要額を下回ることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に,香川県内の農業経営者がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しているか,また,その協力関係に基づいて農業経営者が生産,販売等の面で経営者能力をいかに高めているかについて把握するためのアンケート調査をおこなう.アンケート対象者が1000人程度になり,その調査と回答集計での郵送費,調査協力依頼費,人件費としては90万円程度の所要額を見込んでいる.ここに,平成27年度の所要額と使用額との差額の分を使用する予定である.
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