2016 Fiscal Year Research-status Report
農村社会における信頼と協力に基づく農業経営の規模拡大の可能性に関する分析
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26450314
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
武藤 幸雄 香川大学, 農学部, 准教授 (90596123)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経営規模拡大 / 雇用管理 / 人材育成 / 人的投資 / 経営管理 / 協力関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には,前年度までの科研費に基づく研究成果をまとめた学術論文として,以下が刊行された.①武藤幸雄「集落営農の効果に関する農業者の理解支援に関する考察」,農林業問題研究, 52 (2), 52-58, 2016. ②武藤幸雄「担い手不足地域における新規就農者の農地借入の支援」,農業経営研究, 54(2), 49-54, 2016. また,平成28年度には,科研費に基づき新たに進めた研究成果をまとめる形で,以下の学会報告をおこなった. ③武藤幸雄「規模拡大志向を持つ農業者の経営改善努力と所得変化に関する実証分析」,2016年度日本農業経営学会研究大会報告要旨,78-79,2016年9月,京都大学. ④武藤幸雄「農業経営における組織設計の動向に関する分析」,第66回地域農林経済学会大会報告,2016年10月,近畿大学. ⑤武藤幸雄「集落営農における労働供給への経験効果と最適賃金」,2017年度日本農業経済学会大会報告要旨,K42,2017年3月,千葉大学. このうち,④の学会報告の内容を学術論文に書き表して,地域農林経済学会学会誌『農林業問題研究』に投稿した.この論文は,以下のタイトルであり,同学会誌への掲載受理が決定された. ⑥武藤幸雄「農業経営組織における雇用管理・人材育成の動向に関する考察」,「農林業問題研究」に掲載予定. 以上の研究活動を通じて,企業的な農業経営体や集落営農組織が経営規模拡大に取り組む際に必要な組織設計のあり方について経済学的知見を得ることが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度には,平成27年度におこなったアンケート調査や経営事例調査の結果について詳細な分析・検討を進めた結果,農業経営の規模拡大において経営管理,特に,雇用管理と人材育成がどのような役割を果たし得るか,農業経営の発展にむけて雇用管理と人材育成をいかに効果的に進め得るか,についていくつかの知見を得ることが可能になった.その成果を学会報告,学術論文にまとめて発表した. 他方で,農業者どうしの農地貸借や農地管理,JA活動に関する協力関係の中には,前年度のアンケート調査では十分には把握しきれなかった点が多く残った.それらのうち一部は,企業的な農業経営の規模拡大にとって重要な役割を果たしている場合が多くあることが予想されるようになった.そこで,研究計画を平成29年度にまで延長して,農業者どうしの農地貸借や農地管理,JA活動に関する協力関係のうち規模拡大にとって重要なものをさらに掘り下げて調査分析する必要があると判断した.この調査研究の準備と実行に時間を要しているため,研究計画の進捗はやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には以下の研究計画を進める. 1.香川県さぬき市と高松市において,大規模農業経営に取り組む若手農業者を周辺の高齢農業者が農地・水管理や農地貸借斡旋などを通じて支援している事例に関して,詳しい実態調査をおこなう.そして,両者間の協力関係の成立メカニズムについて,社会経済理論に立脚した説明を行えるようにする. 2.香川県坂出市において大規模経営に取り組む農業法人がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しているか,また,その協力関係がその経営規模拡大にいかに貢献しているかについて,実態調査をおこなう.また,その調査結果に依拠しながら,農業法人と地元の一般農業者との間で協力関係が成立するメカニズムについて,社会経済理論に立脚した説明を行えるようにする.
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Causes of Carryover |
平成28年度では,農業経営者がJA活動を通じて周囲との協力関係をいかに構築しているか,また,その協力関係に基づいて農業経営者が生産,販売等の面で経営者能力をいかに高めているか,についてアンケート調査を実行し,その実行のために100万円程度の支出を充てる計画を構想していた.しかし,平成27年度におこなったアンケート調査の結果に関する統計分析に時間がかかり,また,研究成果を論文にまとめて執筆することを優先させたため,上記のアンケート調査計画を実行できず,未使用の予算額が生じることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には,香川県さぬき市と高松市における,大規模農業経営に取り組む若手農業者と周辺の高齢農業者との協力関係に関する実態調査と,香川県坂出市における大規模経農業法人と周辺の農業者との協力関係に関する実態調査において,大規模なアンケート調査と,面談調査を実施する.この実施にあたってアンケート郵送,調査協力依頼費を計上する.また,アンケート回答結果の集計のためのアルバイト人件費を計上する,また,研究成果の学会報告のための宿泊費,研究成果をまとめた論文の投稿料を計上する.
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