2015 Fiscal Year Research-status Report
韓国のFTA対応としての農業補完対策に関する実証研究
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26450316
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
品川 優 佐賀大学, 経済学部, 教授 (10363417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | FTA / 韓国農業 / 農業所得 / 直接支払い |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国は,アメリカやEU,中国,オーストラリア,NZなど農産物輸出大国とのFTAを立て続けに締結しており,こうしたFTA戦略が国内農業にどのようなインパクトを与えているのかに注目し,今年度は調査をおこなった。 調査地域は全羅北道完州郡であり,米,園芸,韓牛,韓豚といった多様な品目を生産する農家からヒアリングをおこなった。米については,規模の拡大が進んでいることに加え,米所得等補填直接支払いが全階層のコストをカバーする基準価格を設定していることから,一定レベルの農家では大きな影響が必ずしも生じていたわけではなかった。もちろん,FTAにおいて米は例外品目扱いとしていることもあるが,他方WTOでは関税化へ移行したこが今後どのように作用するのかに注目する必要がある。 園芸等については,パプリカやイチゴなど,韓国でも比較的所得となる品目への集中が進むとともに,直売所による地産地消や加工場に取り組むといった6次産業化が韓国においても注目されていた。 韓牛・豚では,調査した農家は規模が大きく,等級の高い高品質を供給する農家ということもあり,生産費統計以上の所得をあげていた。特に近年,政府による廃業支援の影響もあり,飼養頭数が大きく減少したため,かえって国内価格が上昇していること,輸入増が懸念されたアメリカでもBSEの発生や異常気象による飼料穀物の生産減,飼料価格の高騰と米国内生産の縮小といった事態も生じたことが,輸入価格の上昇につながるなど,現段階では国内の韓牛・豚農家が混乱に陥るような状況にはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国農村経済研究院での韓国農政・農業の実態・展望等についてのヒアリング調査や資料収集をおこなうとともに,全羅北道完州郡での農家調査をおこなうことで一定の成果を得られたことが,「概ね順調」と評価した根拠である。
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Strategy for Future Research Activity |
FTA締結国からの主な品目の輸入量の確認と,それが国内農業にどのような影響を及ぼしているのかの検証,FTA被害補填直接支払いや廃業支援の発動実態,現場での構造改善や離農等による後退といった現場での影響・実態について調査,検証,考察をおこなう。
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Causes of Carryover |
農林水産省「平成27年度海外農業・貿易事情調査分析事業(農業所得構造分析)」において,韓国での現地調査の研究費用があてがわれ,本年度はそれを用いて調査を遂行することができたため,当初予定よりも少ない支出で済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は最終年度のため,韓国での資料収集及び現地調査,日本国内での資料収集,特にアジアの資料がそろっているアジア経済研究所や農林水産政策研究所への訪問等で適切な使用を図る。
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