2015 Fiscal Year Research-status Report
担い手における農地の面的集積の成立条件と農村集落の存立状況
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26450324
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
細山 隆夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター水田作研究領域, 主席研究員 (50526944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉戸 克裕 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター水田作研究領域, 上級研究員 (30567714)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 北陸水田作 / 北海道水田作 / 北海道酪農 / 農地の面的集積 / 大規模借地経営 / 農村集落 / 大区画圃場整備 / 地域資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度として、a北陸水田作では新潟県上越市の大区画圃場整備地域(三和区)、30a区画圃場整備地域(高士地区)、b北海道水田作では上川中央当麻町を対象に実態調査・分析を行うとともに、c北海道酪農では新得町を対象にセンサス個票データ、行政データの収集・集計・分析と予備的な実態調査を行った。その結果の概要は以下の通りである。 a北陸水田作:大区画整備地域におけるA大規模借地経営は出作先Z集落の農地5割を耕作し,他の複数借地経営も同集落に入り作する反面、集落内農家は1戸のみとなり、入り作者群による集落の完全集積が間近なことを明らかにした。同時に大区画整備によって地域資源管理領域が消失し、借地経営群への出役要請もないことを明らかにした。あわせて、30a区画整備地域では少数の大規模借地経営が地区農地の4割を占めるまでに集積度合いを高めていたこと、及び地域資源管理では各出作先集落が自主的に引き受ける場面も見られたことを明らかにした。 b北海道水田作:借地関係が展開しつつも,低地価かつ貸し手が高齢の土地持ち非農家の下,それは結局売買に転化する性格にあった。②大規模水田作経営では集落別の作物ゾーニングによって圃場分散から脱却しており,これが存立条件となっていた。 これら結果の一端を細山(2015)「農地賃貸借展開地域における大規模水田作経営の出作,通い作の現段階的性格-北陸,北海道の動き-」『フロンティア農業経済研究』として公表予定(受理済み)である c北海道酪農:新得町K地区では離農が激しい反面、大規模経営、法人経営がひしめき合っていること、同時に残る一般農家は高齢農家であって直近の離農が確実なこと、即ちいっそうの構造変動が急速に進むことを明らかにした。その一端を杉戸(2015)「北海道放牧酪農経営における技術的課題と技術開発方向」、『農業経済研究』として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、a北陸水田作では大規模借地経営における出作先集落の集積状況、及び地域資源管理からの解放、b北海道水田作では借地の購入への移行、集落別の作物ゾーニングによる圃場分散からの脱却、等を示すことができた。 加えて、既に受理済みの査読付き論文のみならず、関連した査読付き論文、複数の学会報告、図書等を公表することができた。若干取り上げれば、細山(2015)「北陸地域における大規模借地経営の形成・展開と地域的存立条件」戦後日本の食料・農業・農村編集委員会編(農林統計協会刊)第13巻 編集担当:堀口健治・梅本雅『大規模営農の形成史』、細山(2015)「上川中央地域における水田作経営の米生産対応-最良食味米地域・当麻町-」『日本農業経営学会大会・地域シンポジウム報告』、細山・杉戸(2015)「北海道水田地帯における農地賃貸借の性格と大規模水田作経営の存立条件-上川中央・当麻町-」『農業問題研究学会』報告(投稿中)、等である。 c北海道酪農についても、センサス個票データ、行政データの蓄積・分析は十分であるうえ、内容の一端は先の学会論文にも結実しており、本格的な調査実施に取りかかれることとなった。 以上を総合的に考慮して、「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
a北陸水田作:大区画整備地域における大規模借地経営と完全離農が間近な集落との関係について、さらに調査分析を深める。30a区画整備地域では他にも担い手たる大規模借地経営が形成されており、同経営の調査を通して、最終的な借地経営群による面的集積の帰結点を示すこととする。このうち、大区画整備地域に関しては日本農業経済学会での報告、及び投稿を予定している。 b北海道水田作:上川中央における望ましい集落再編の方向を検討する。同時に、南空知地域の農村集落も調査対象とし、「人・農地プラン」「農地中間管理機構」推進下における農地の面的集積の動きを確認する。ここで南空知も取り上げるのは、同地域が以前から離農跡地の移動先として隣接農家への優先、即ち担い手の農地団地化が実現されており、それゆえ「人・農地プラン」「農地中間管理機構」の推進が及ぼす影響もまた強いと思われるからである(逆に、そのため当初の計画では外した)。 c北海道酪農:新得町K地区・U集落を対象に実態調査を行う。ことに該当地域では大規模経営体はひしめきつつ、いっそうの規模拡大意欲が強く、また離農間近な農家も存在している。従って、経営の大規模化がどこまで行われるのか、面的な追究を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は順当に北海道、北陸の調査研究、及び学会報告・投稿等を行え、必要な予算も適切に遂行し得たしだいにある。次年度使用額が生じた理由として、前年度実績でも申し上げたが、初年度に北陸水田作、北海道水田作にエネルギーを注いで(さらに研究代表者の短期入院もあり)、北海道酪農の調査を後にしてしまったことが作用している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は北陸水田作、北海道水田作、北海道酪農の調査を実施し、同時に学会報告・投稿を行う予定であるため、それらの経費に充てる。具体的に、a北陸水田作では実態調査等を通じ、大規模借地経営の面的集積と出作先集落の存在状況を明らかにする。この結果は日本農業経済学会で報告を行うとともに、投稿する。b北海道水田作では南空知における農村集落の調査を進め、面的集積方策をリポートで整理する。C北海道酪農では実態調査を完遂した後、学会で報告・投稿する。そして、以上を全て取り纏めたうえで報告書として提出する。
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Research Products
(15 results)