2015 Fiscal Year Research-status Report
永年性木本作経営における有生固定資本財の評価法に関する研究
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26450325
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
大室 健治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター・営農生産体系研究領域, 主任研究員 (70455301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有生固定資本 / 果樹 / 耐用年数 / 減価償却 |
Outline of Annual Research Achievements |
岡山県船穂地域の先進的なブドウ経営であるA氏、並びに広島県「福山市ぶどう生産販売組合」の組合員へ経営調査を実施し、ブドウ樹の固定資産評価に関する経営者の判断基準に関する情報を得た。さらに、A氏への経営調査によれば、ブドウの新品種であるシャインマスカットは4年目から量と品質が安定するが、ハウスの加温栽培は樹木への負担が大きいため成木後から10年を改植の目安としている。特に、老木になると生産量が不安定になるため、老木の樹勢回復に経営努力を傾けるよりも若木利用のみの方が合理的と判断している点が確認された。また、一般に面積の小さい果樹農家は成木園の中に幼木を1本づつ入れて更新するが、A氏のように複数のハウスを保有してハウス単位で管理する際には、作業効率を優先したハウスごとの全面改植が合理的であるという判断が働く点も確認した。 有生固定資本財の成育成熟期については、所得税法上(所得税基本通達49-28)では、ぶどう樹「6年」であり、他方、耐用年数については「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づき、ぶどう樹(甲州ぶどう)「15年」とされているが、A氏の判断は所得税法上よりも成熟期は2年短く、耐用年数は5年短いことが確認された。すなわち、先進的な果樹経営者における有生固定資本財の評価基準は生産効率や経営戦略と強い関連があり、所得税法や耐用年数の省令とは乖離が生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、有生固定資本財の樹種については、ブドウだけでなくリンゴやカンキツ等も含めて調査分析を行い、樹種間の比較を行うことを想定していた。しかし、今年度までに調査を行ったブドウにおいて、巨峰、ピオーネ、デラウェア、シャインマスカット等の品種差によっても経営者の成熟年次や耐用年数に関する考え方には大きな相違があることが確認された。そのため、本科研の最終年度は樹種をブドウに限定し、有生固定資本財の評価基準についてはブドウの品種間での比較に限定することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、ブドウの品種間差に焦点を当てて有生固定資本財としてのブドウ樹に対する経営者の評価基準の相違を明らかにする。岡山県のピオーネとシャインマスカット、長野県の巨峰とナガノパープル、島根県のデラウェア、香川県のシャインマスカットを対象にして調査分析を行う予定である。これらの調査結果を踏まえ、経営の実態に沿った減価償却を実施するための耐用年数と残存価額を明らかにする。その計算方法については、加用信文が指摘するように便法としての定額法を採用するのではなく、成熟後の最盛期に最も多く固定資本財が減価する方法として、使用強度(生産数量または生産に費やされた時間)に応じて償却する比例償却法の適用可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していて対象への調査が実施できなかったため、その分の旅費を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度未実施となった調査を実施する。具体的には、香川県のシャインマスカット農家の経営調査を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)