2015 Fiscal Year Research-status Report
途上国農村における農村共有資源の維持管理に関する研究
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26450326
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40178413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 灌漑 / 制度変化 / 土地生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシア、中部ジャワ州、クドゥス県、ウンダアン郡のシドマクムール水利組合における水利施設の維持管理に関する制度変化について調査した。1994年に水利組合が成立され、灌漑水の共同利用が始まった。2007年まではスワクロラ制度にしたがって、水利施設の維持管理がなされてきた。スワクロラとは灌漑水の供給や水利施設の維持管理を農家がお互いに協力して行う制度である。2007年に制度が変化し、レラン制度が導入された。レランとはオークションによって水利組合長を決定し、その組合長が水利組合の運営を担う制度である。スワクロラからレランへ変化した理由は農道、橋、水路といったインフラ投資に多額の資金が必要になったためである。オークションによる入札資金は、村のインフラ投資に使われる。レランシステムでは維持管理作業の担い手は、組合長が雇用した労働者であり農業従事者ではない。2015年9月よりレランシステムから新スワクロラシステムへ制度が変化したが、この理由は水路の維持管理の質が低下したことが主たる要因であった。維持管理主体が農家ではなく雇用労働者の場合、水路を利用しない雇用労働者は維持管理の質を向上させるインセンティブが弱い。 ネパールにおいては、1995,2003,2010年に実施されたNepal Living Standard Surveyの個票データを用いて灌漑の土地生産性に及ぼす効果を定量的に明らかにした.分析では,灌漑の有無と土地条件(高地・低地)を考慮して,農地条件を4つに区分した。農業粗収入は2010年の農産物価格で評価し、農地条件によってどの程度農業粗収益が異なるのかを明らかにした。低地では,灌漑があることで農業粗収入が高地の約1.2倍になる。また,高地では,灌漑がない農地と比較して,平均で約3倍の農業粗収入の差があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドネシアにおいては、水利施設の維持管理に関する制度変化の要因の一端を明らかにできた。その要因が農村におけるインフラの投資と関係していることも明らかにできた。また、灌漑は乾季における野菜などの収益作物の栽培を可能とし、農業所得の向上に寄与していること、野菜作にける灌漑水の経済的価値を推計するなど一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、インドネシアの調査対象村水利施設の維持管理制度には大別して、スワクロラ制度とレラン制度の2つがあるが、実際、これらの制度がどの程度普及しているのかは明らかではない。今後はこうした制度の普及実態などについて明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
ネパールにおいて農村調査を実施する予定であったが、4月25日に大地震が発生した。この地震で調査予定地はもとより国内各地で多数の死傷者が出た。多くの建築物が倒壊し、交通障害も発生したため、治安の安定も懸念されていることから調査を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、今後、ネパールでの農村調査が可能であれば、未使用額はその経費に充てることにしたい。状況を見極め、もし不可能であれば、研究目的を遂行するために、他の適した調査地を選定するか、もしくは、統計データによる分析のために使用する。
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Research Products
(4 results)