2014 Fiscal Year Research-status Report
海外出稼ぎが南・西アジア農村の社会経済に与える影響についての実証的研究
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26450332
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
須田 敏彦 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (00407652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 隆一 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (70198901)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海外出稼ぎ / 国際移民 / 南アジア / バングラデシュ / 西アジア / イラン / 農村経済 / 農村社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度、須田は26年8月にバングラデシュ、シンガポール、マレーシアにおいて、主にバングラデシュの農村からの海外出稼ぎ状況について現地調査を行った。また、27年3月には、共同研究者の原と共同して、バングラデシュ、UAE(ドバイ)、オマーン、イランで、海外出稼ぎの状況について現地調査を行った。バングラデシュで以前から現地調査を続けている2つの村において、海外出稼ぎが村の経済社会に与える影響と、東南アジアや中東産油国で出稼ぎをしているバングラデシュ人が、出稼ぎ先でどのように働き生活をしているのかを確認することが中心的課題である。26年度は、東南アジアと中東という主要な出稼ぎ先でバングラデシュ人の出稼ぎについて観察をするとともに出稼ぎ者にインタビューなどをした。また、原とともにイランで共同調査した。 26年度、原は米国(ハーバード大学、MIT、コロンビア大学)、カナダ(ブリティッシュ・コロンビア大学)の中東研究機関を訪問し、北米の中東研究、特にイラン研究の動向などを把握した。また、須田とともにバングラデシュ、ドバイ、オマーン、イランの現地調査を行った。ドバイでは、原の専門領域であるイランおよびアフガニスタン系住民から聞き取り調査を行った。その結果、ドバイのイラン系はシーラーズ市やペルシア湾に近いラール地方出身者が多いこと、またアフガニスタン系は衣料品や絨毯販売店などで働く人が多いことなどが明らかになった。イランの農村における調査では、多くの村人が都市部に流出する一方で、アフガニスタンからの出稼ぎ労働者が都市部だけでなく農村部にも流入していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画をしていた海外調査について、ほぼ計画通り実現できた。須田はバングラデシュの調査村での2度の情報収集に加えて、東南アジアおよび中東においてバングラデシュ人を中心に南アジアからの海外出稼ぎ者についてヒアリング調査などを行った。その成果を、平成27年2月、学内の研究会ではあるが、南アジア研究者に対して報告し討論を行った。 また、平成26年6月には、「増加する南アジアからの海外出稼ぎ労働者‐マイクロファイナンスに期待される新たな役割-」『Discussion Paper』No.198、名古屋大学大学院国際開発研究科、を発表した。これは、前年度で終了した別の科研費調査の成果であるとともに、本科研費調査の基盤となる基礎データの整理を行ったものである。南アジアの海外出稼ぎ者の量的な把握とともに、送金が各国の経済に与える影響の分析を行っており、本科研費調査のテーマについて研究を深める上で、基礎となる研究成果である。 原も、アメリカおよびカナダにおける中東研究の動向を把握するとともに、イランとドバイでの現地調査を行った。それにより、イランでは農村部と地方都市における人口移動(農村→都市および海外。外国(アフガニスタン)→イラン)の概要を把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度、須田はバングラデシュ農村での現地調査を中心に、南アジア農村からの海外出稼ぎが農村社会経済に与える影響について実証的な研究を進める予定である。具体的には、バングラデシュコミラ県の二つの村で現在海外出稼ぎ中の人および海外出稼ぎ経験者を対象とした海外出稼ぎの実態・意識調査などを行う。また、村の経済構造がどのように変化したかを明らかにするために、二つの村で全戸調査を行う予定である。2006年にも同様の全戸調査を行っており、この調査により、ほぼ10年でバングラデシュ農村の経済構造がどのように変わったかを明らかにすることが可能であろう。その変化における海外出稼ぎの役割を明らかにすることが今後の研究課題である。農村調査を行う27年度は、本研究の核となる年である。現地調査は夏休みの8月ないし9月、および28年の2月ないし3月を予定している。27年度には大東文化大学において小規模ながらも南アジア研究分野での国際会議が予定されており、その場で本研究の成果を報告したい。 原も、今まで行ってきたイランの農村において継続調査を行う。それと同時に、その農村からの移住者が多い近くの地方都市において、村からの移住者やアフガニスタンからの出稼ぎ労働者の実態などについて調査を行う予定である。また、ドバイへの多くの出稼ぎ労働者や商人の出身地であるペルシア湾近くのラール地方の町や村での現地調査も計画している。
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Causes of Carryover |
実際には計画通り年度末ぎりぎりまで現地調査にでたため、出張費の精算処理が年度内に間に合わなかった。そのため、出張費の精算が次年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に精算処理をすることによって全額執行される予定である。
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Research Products
(5 results)