2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on process of obtaining milk bovine by rural poor: Rediscovery of useful mechanism existing in rural society for realizing poverty reduction
Project/Area Number |
26450334
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
秋吉 恵 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (00580680)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 南アジア / 小農・零細農 / 乳用家畜 / 貧困削減 / 委託飼育 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュ・ノルシンディ県とタンガリ県においてそれぞれ人口規模が異なる2つの村を選択し乳用家畜の飼育家庭を対象にインタビュー調査を実施した。どちらの村も多くの土地所有層が土地なし層や零細農に土地を委託して作物を育てる小作制度が行われている。農地の小作制度と同様に、牛の委託飼育も認められた。ヒンドゥー教徒が多くを占めるインド・グジャラート州の村における委託飼育システムと、ムスリムがほとんどを占めるバングラデシュの農村における委託飼育システムとでは、乳用目的で飼育される雌牛に関しては類似している一方、肉用牛の存在が大きく異なっていた。 バングラデシュの4ヶ村では、ミルクの流通は生産者と消費者の対面取引か、ミルク仲買人による買取であり、インド・グジャラート州で主な流通経路であった酪農協同組合の組織化は認められていない。この4ヶ村で委託飼育を行っている農家の割合は、インド・グジャラート州よりも多いこと、グジャラート州での聞き取りでは、委託飼育を行う農家が減少していることから、酪農協同組合の組織化もしくは商業的酪農の発展が委託飼育の継続になんらかの影響を持つことが推察される。 タンガリ県の北部には複数の乳業会社の加工工場があり、その近隣村では酪農組合の組織化を確認していることから、バングラデシュの委託飼育にも商業酪農進展が影響している可能性がある。委託飼育のシステムは、貧困層が乳用家畜を入手しミルク所得を得る契機となることで、貧困削減の一助となり得る。しかし商業的酪農の進展は、伝統的に村社会が形成してきた委託飼育という相互扶助の仕組みを弱体化している可能性が示唆された。商業的酪農への参入がまだあまり進んでいないバングラデシュと、強く進んでいるインド・グジャラート州での調査結果の分析をさらに進めることで、この可能性とその対策についての考察を深めたい。
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