2014 Fiscal Year Research-status Report
凍結融解にともなう土中の物質移動予測の多次元および非平衡系への進展
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26450338
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
渡辺 晋生 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10335151)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 凍土 / 不凍水 / 透水係数 / マクロポア / カラム実験 / 数値解析 / 寒冷圏水循環 / 融解浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、実際に現場で生じるような非平衡な土の凍結・融解過程や多次元の凍結にともなう物質移動の予測を目指した系統的な実験と数値モデルの検討を目的としている。26年度は、まず、異なる凍結履歴を持つ土を、様々な速度で凍結・融解した時の凍土中の不凍水量の違いや見かけのヒステリシスを、薄層凍結装置を作成し室内実験により明らかにした。この際、試料の温度管理には、今年度購入したプログラム式の循環型精密恒温水槽を用いた。さらに、装置を改良し、融解過程における凍土の透水係数と不凍水量の同時測定に成功した。そして、凍土の透水係数と温度の関係と未凍土の不飽和透水係数とマトリックポテンシャルの関係の類似点と、非平衡に起因する相違点をそれぞれ明らかにした。また、35 cm長のカラム凍結実験を行い、マクロポアが土の凍結および融解浸潤に及ぼす影響を調べた。そして、マクロポア内の水蒸気の凝結により土の凍結が不均一に抑制されること、マクロポア近傍の融解浸潤は促進されるが、マクロポア内の水の再凍結が不規則に生じ得ることを明らかにした。こうした成果は、土木工事や遮水壁に凍土を利用する際の基礎的知見となるだけでなく、自然凍土の不均一な融解過程を考える上でも有用な知見である。また、鉛直水分分布を持つ2次元供試体を側方より凍結し、水分分布の異方性が土の凍結とそれにともなう水分移動に及ぼす影響を実験的に調べるとともに、結果を2次元の凍結モデルで解析した。さらに、凍結層の下で生じる還元過程や凍土地帯の窒素・炭素循環を考えるため、湛水条件下にある土中の表面酸化層と脱窒層の形成に、浸透水の流速や基質の種類や濃度が及ぼす影響を微視的に観察すると共に、態の変化をともなう窒素の移動モデルを飽和・不飽和条件下において検証した。以上の成果を関連学会で発表した。また、現在関連各誌に論文を投稿ならびに投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
室内実験については、まずは凍土の透水係数と不凍水量の同時測定が予定通り行え、未凍土の土の不飽和透水係数との相同性の確認やヒステリシスモデルとの整合など、新たに明らかになった知見とその整理が進んでいる。マクロポアを含む土の凍結・融解浸潤についても、解析が数値モデルの検討とともに進んでおり、計画に即した以上の成果が得られているといえる。また、2次元凍結実験や凍結破砕を考慮した現場レベルでの実験・観測については、本年度中に多くの実験的知見を得たが、結果は未解析な部分も多く、数値解析との整合もとれていない。これは当初の計画通り次年度に取り組むべき課題とする。酸化還元電位や微生物活性、窒素動態に関しては、未凍結土を対象とした基礎実験が概ね終了し、貴重な先駆的知見を得た。現在、溶存酸素との関係や浸潤にともなう微生物移動との関係を整理するとともに、数値モデルでの検討を進めており、今後の凍結を絡めた実験や窒素動態の数値計算モデルの改良に向けた準備が整いつつあるといえる。本年度は、これらの成果を、十数件の学会発表として公開したが、論文としてのとりまとめは次年度の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
凍土の透水係数については、非平衡過程の検証実験や土質依存性を検討する実験を継続するとともに、成果を論文に公開する。そして、数値計算に適用可能な新たな凍土の透水モデルを実験結果に基づき検討する。マクロポアが凍結・融解浸潤過程に及ぼす影響についても、これまでの成果を論文として公開し、さらに凍結・融解サイクルの影響について、実験・数値解析の両手法からの検討を進める。また、これらの実験については凍結装置をそれぞれ改良するとともに、凍土中の負圧測定に資するセンサーを導入し、凍結や透水係数との関係の明確化や数値モデルの改良を目指す。2次元凍結実験と凍結破砕を考慮した現場の実験については、数値解析に基づき問題点を整理し、鍵となる要素実験を行うことで現象解明を試みる。凍結面下の酸化還元過程と窒素動態の変化については、還元にともなう溶存酸素の減少と脱窒の進行をマイクロセンサを用いたカラム実験により検証する。また、凍土層が融解し好気条件になった際の、窒素の形態変化をともなう挙動についても、これまでの実験装置を流用して観察する。そして、土中の化学変化-物質移動連結数値モデルHP1により、酸化還元電位や溶存酸素の変化と窒素動態の変化を解析する。
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Research Products
(20 results)