2015 Fiscal Year Research-status Report
農地・農村地域の石垣技術伝承のための技術的課題の解決に向けて
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26450339
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡島 賢治 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (90466805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 農地石垣 / 土壌流亡 / 流出土砂量予測 / 棚田 / 段畑 / 表層地質 / 模型実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は農地石垣の保全管理において適切な維持管理法を明らかにすることを目的に研究を行った。 当初の研究計画にもとづき、現地観測の観測機器を増やし地下水位、土壌水分量、日射量、風向風速、石垣からの流出土砂量等を計測した。この結果から、石垣からの流出土砂量は降雨による流出量よりも、営農の振動または小動物などにより日常的に流出している流出量が多いことが明らかとなった。土砂流出量については予測式も構築し観測地の石垣からの土砂流出量の予測を行えるようになった。この結果は、今後の維持管理における管理者への提言にも大きな影響をあたえると考えられる。さらに今後は長期計測により、土壌水分や地下水位より農地石垣に作用する土圧の変化を明らかにできると考えられる。 また、全国の農地石垣の分布を表層地質との関連によって明らかにした。全国の450箇所の棚田・段畑地域を土羽・石積みに分類し、その分類と表層地質の関連を明らかにした。このために精力的に現地調査を行い、全国30以上の地域で土羽・石積みの分類の検証を行った。この結果、棚田・段畑法面の土羽・石積みの選択は表層地質と非常に強い関係性があり、火山岩地域でもグリーンタフや火砕流や火山岩屑の分布する地域は土羽が多く、堆積岩地域では古第三紀よりも古い表層地質をもつ地域で石積みが選択されていること、変成岩の地域ではほとんど石積みとなることが明らかとなった。これにより、地域景観の特色を維持する棚田法面の選択が可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、模型実験と現地観測の2本柱で検討を進めていた。 平成26年度は模型実験を中心に研究を進め、平成27年度は現地観測を中心に研究を進めることができた。平成27年度以降に予定している農地石垣の保全・災害復旧に関するアンケート調査については、研究実績に明記できるほどではなかったが調査地を増やしながらアンケート結果を増やしており、次年度分析可能と考えている。 研究を進める課程で、平成27年度に農地石垣と棚田法面の関係を表層地質から明確に整理できたことから、新たに農地石垣に使用される石材と表層地質との関係を明らかにする必要が生じたが、平成27年度の現地調査と平成28年度に計画している現地調査で整理・分析することが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、模型実験による追加実験を計画していたが、観測対象地としていた熊本県熊本市西区河内町は平成28年4月16日の熊本地震で震度6強が観測された地域に入っている。このため、急遽研究計画に地震による農地石垣の被災状況の実態調査を追加する計画である。大規模な農地石垣地域での強震度での地震被害の調査事例はほとんどなく、貴重な災害データとなると考えられる。また、観測対象地には、比較的表土が薄い段畑に誘電率土壌水分センサーを複数個設置してある。このため、地震発生時の土壌中の電気的な影響を検討できる可能性がある。 農地石垣の保全・災害復旧に関するアンケート調査については、平成28年度も追加して行い、分析を行う予定である。また、本年度明らかとなった土羽・石積みの選択要因の分析にもGISによる地形分析を加え、谷密度、傾斜度分布などからより定量的な選択要因を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた近距離での現地調査が、研究代表者の体調不良により実施できなくなった。このため調査員2名分1泊の宿泊費およびレンタカー代が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予め予定していた現地調査は三重県南部・和歌山県南部の棚田・段畑調査である。これについて再度日程調整し計画通りに次年度使用額を消化する予定である。また、翌年度分として請求した助成金には、上記の現地調査の計画は含まれていないため、翌年度請求分の助成金は請求した計画通りに使用する予定である。
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